最新記事

台湾のこれから

今、あえて台湾に勧める毛沢東戦術

TAIWAN NEEDS A MAOIST STRATEGY

2020年1月10日(金)12時20分
ジェームズ・ホームズ(米海軍大学教授)

中国の侵攻を想定した台湾の軍事演習(2019年5月、屏東県) TYRONE SIU-REUTERS

<中国人民解放軍は近年、台湾近海での軍事演習を強化している。1月11日の総統選で再選を目指す蔡英文が、独立を守るために「弱者の戦法」を取り入れるべき理由。本誌「台湾のこれから」特集より>

腹をくくって、毛沢東主義を取るべきだ――これは、台湾の政府と軍部に対する私からのアドバイス。彼らは今、中国が台湾海峡を越えて支配を拡大させることを恐れている。
20200114issue_cover200.jpg
中国人民解放軍は近年、台湾近海での軍事演習を強化している。中国共産党の幹部からは、台湾政府を本土の支配下に置くためには武力行使も選択肢から除外しないという脅しめいた声も聞こえてくる。

いや、選択肢から除外しないなどというレベルではない。中国共産党は、台湾が屈しないなら武力を行使すると折に触れて言い立てている。2005年には反国家分裂法によって、この脅しを明文化した。

屈服しなければ征服する。中国共産党は台湾に対し、マフィア映画のボスさながらに有無を言わせぬ脅しをかけている。

しかし私が台湾に毛沢東主義を取るよう勧めるのは、中国に屈服すべきだという意味ではない。むしろ全く逆の話だ。

台湾はリベラルで民主的な生活も、目下の独立状態も諦める必要はない。決して諦めてはならない。そのためにも毛沢東の戦略を採用すべきだ。なぜか。この戦略は、戦いにおいて弱者が強者に勝つための最善の方法だからだ。

台湾海峡での弱者は自分たちのほうだ――この現実を台湾軍の幹部が肌で感じれば、毛沢東主義を取り入れたくなるだろう。そうなれば形勢を逆転するための戦略や武器は、自然と台湾側に転がり込んでくる。

そのために台湾の政府と軍は、自分たちが強者だという錯覚を捨てなくてはならない。これはある種の文化大革命と言っていい。これまで台湾の軍部は、実際に戦いが始まれば人民解放軍を相手に海も空も制することができると信じてきた。兵力では人民解放軍に劣るものの、技術や兵士の資質は自分たちが上回ると考えてきた。自分たちの「質」は中国の「量」に勝る――それが台湾側の認識だった。

この見方におかしな点は全くない。ただしそれは、台湾がアメリカの軍事支援を今後も受け続け、中国が最新鋭兵器に投資する余裕がない貧困国であり続けていれば......の話だ。

アメリカの政権と議会は、台湾への武器売却にますます及び腰になっている。中国は世界経済に門戸を開いて豊かになり、その富を自国の海空軍やロケットなどの新型兵器につぎ込んでいるというのに。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スイス・スキーリゾートのバーで爆発、約40人死亡・

ワールド

台湾総統「26年は重要な年」、主権断固守り防衛力強

ワールド

再送トランプ氏、シカゴやLAなどから州兵撤退表明 

ビジネス

ビットコイン、2022年以来の年間下落 最高値更新
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙」は抑止かそれとも無能?
  • 2
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめる「腸を守る」3つの習慣とは?
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    なぜ筋肉を鍛えても速くならないのか?...スピードの…
  • 5
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 6
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 7
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 8
    「断食」が細胞を救う...ファスティングの最大効果と…
  • 9
    日本人の「休むと迷惑」という罪悪感は、義務教育が…
  • 10
    米中関係は安定、日中関係は悪化...習近平政権の本当…
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 4
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 7
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と…
  • 8
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 9
    中国軍の挑発に口を閉ざす韓国軍の危うい実態 「沈黙…
  • 10
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中