最新記事

日本外交

安倍首相「中東情勢を深く憂慮」 イランへ外交努力と自衛隊派遣で情報収集強化

2020年1月6日(月)18時21分

安倍首相は6日、伊勢神宮参拝後の年頭記者会見で、中東情勢に関して現状を深く憂慮するとし、事態のさらなるエスカレーションを避けるべきと述べた。写真は先月、成都で代表撮影(2020年 ロイター)

安倍晋三首相は6日午後、伊勢神宮参拝後に行った年頭記者会見で、中東情勢の現状を深く憂慮すると述べ、事態の深刻化は避けるべきとの認識を示した。また、自民党総裁(首相)の任期が2年を切る中での憲法改正に関連しては、自身の手で成し遂げる考えは揺るがないとしつつ、期限ありきではないとも述べた。

情報収集で自衛隊中東派遣

米国とイランの緊張が高まる中東情勢について安倍首相は「緊迫の度を高めており、現状を深く憂慮している。事態のさらなるエスカレーションは避けるべきであり、全ての関係者に緊張緩和のための外交努力を尽くすことを求める」と強調。

先月イランのロウハニ大統領と会談したことに触れ「緊張緩和と情勢安定化のために、これからも日本ならではの外交を粘り強く展開する」とし、「外交努力と合わせ、情報収集体制を強化するためこの地域に自衛隊を派遣し、日本関係船舶の航行の安全を確保していく」と述べた。

憲法改正、期限ありきでない

憲法改正では「先の参院選挙、最近の世論調査をみても、国民の声は改正の議論を前に進めよということ」と指摘。「国会議員として、憲法改正に対する国民的意識の高まりを無視することはできず、その責任を果たしていかないといけない」と述べ、「今後とも先頭に立ち国民的議論をさらに高める中で、憲法改正に向けた歩みを一歩一歩着実に進めていく。憲法改正を私自身の手で成し遂げていく考えには全く揺らぎはない」と明言した。

同時に「改憲のスケジュールについては、期限ありきでない。まずは通常国会の憲法審査会の場での与野党の枠を超えた活発な議論を通じ、国民投票法の改正はもとより、令和の時代にふさわしい憲法改正原案の策定を加速させたい」と強調した。

日米安保60年節目の年

抱負としては「自由で開かれたインド太平洋とのビジョンのもと、欧州、インド、豪州など、基本的価値を共有する国との関係を一層深める」などとコメント。

今年は日米安保60年の節目の年に当たるとして「戦後の日本外交を総決算し、その上に新しい時代の日本外交の地平を切り開く1年としたい」と述べ、東アジアの安全保障環境が厳しくなるなか、日米、日米韓はもとより、ロシア、中国とも協力関係を築くことが重要との認識を示した。

「桜を見る会」へのジャパンライフの山口隆祥会長(当時)の参加に関しての質問には、「招待者については個人に関する情報であるため、招待されたかどうかも含めて回答を差し引かえる」と述べるにとどめた。その上で「桜の会については国民から様々な批判があるのは承知している。世論調査の結果を謙虚に受け止め、今後も丁寧に対応する」と語った。

内政面では、全世代型社会保障の実現が「最大のチャレンジ」であるとし、「一定以上の所得がある人は年齢に関わりなくある程度の負担をしてもらい社会保障の支え手になってもらうことで、若い人の負担を抑えながら、社会保障制度を新しい時代へと引き渡していきたい」と述べた。

*内容を更新しました。

(竹本能文 編集:内田慎一、田中志保)

[伊勢市(三重県)/東京 6日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

世界EV販売は年内1700万台に、石油需要はさらに

ビジネス

米3月新築住宅販売、8.8%増の69万3000戸 

ビジネス

円が対ユーロで16年ぶり安値、対ドルでも介入ライン

ワールド

米国は強力な加盟国、大統領選の結果問わず=NATO
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親会社HYBEが監査、ミン・ヒジン代表の辞任を要求

  • 4

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 5

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ロシア、NATOとの大規模紛争に備えてフィンランド国…

  • 9

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 8

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中