最新記事

温暖化対策

温暖化リスク、首都圏浸水の危機シナリオ 荒川氾濫なら被害90兆円規模に

2020年1月19日(日)14時00分

国や都で対策強化、民間との協力も

復旧の成否を握るカギのひとつは、政府と民間企業との協力だ。青柳一郎・内閣府防災担当政策統括官は「経済界とも連携し、サプライチェーンの末端まで対策がとれるようしていきたい」と語る。また環境省でも昨年3月に「民間企業の気候変動適応ガイド」を策定、事業継続に不可欠な取り組みとして供給網確保のチェックリストも盛り込んだ。

国土交通省は、16年に策定した荒川整備計画で「社会経済活動の中枢を担う東京都及び埼玉県を貫流する荒川流域には、人口・資産が高度に集積している」と位置づけ、現状でのダムと調整池に加えてさらに3カ所の調整池を整備する。18年に事業認可がおりたが、完成まで13年間かかる計画だ。

東京都庁の総合防災部では「近年、全国各地で発生している大規模水害等を踏まえ、タイムライン(時系列防災計画)の普及拡大や調節池の加速的な整備など、水害対策の強化も進めている」と明かす。

ただ、こうしたインフラ整備や広域避難計画は短期間での達成を期待しにくい。青柳統括官は「荒川流域の海抜ゼロメートル地帯の広域避難には、受け入れ側の近隣自治体や交通機関との調整に相当な時間がかかる」として、今年度中にとりまとめできるのは避難の基本方針にとどまり、詳細な避難計画のまでは難しいと話す。

数ある懸念のひとつは、今夏に開かれる東京オリンピック・パラリンピックへの影響だ。「五輪が開催される時期は、梅雨前線の到来や台風接近と重なる。政府が対策を講じているのか疑問だ」と関西大学の河田氏は指摘する。

(取材協力:白木真紀 編集:佐々木美和)

中川泉

[東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200121issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月21日号(1月15日発売)は「米イラン危機:戦争は起きるのか」特集。ソレイマニ司令官殺害で極限まで高まった米・イランの緊張。武力衝突に拡大する可能性はあるのか? 次の展開を読む。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米中閣僚貿易協議で「枠組み」到達とベセント氏、首脳

ワールド

トランプ氏がアジア歴訪開始、タイ・カンボジア和平調

ワールド

中国で「台湾光復」記念式典、共産党幹部が統一訴え

ビジネス

注目企業の決算やFOMCなど材料目白押し=今週の米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 3
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 4
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 5
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 6
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 7
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 8
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中