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『セサミストリート』50周年、人種問題を超えたマペットたちは子供番組の革命児だった

After Sesame Street: What’s Next for Children’s TV?

2020年1月22日(水)17時00分
アンジェラ・サントメロ(テレビプロデューサー)

1969年の放送開始以来『セサミストリート』のマペットたち は全米の子供に愛されてきた SESAME WORKSHOP

<人種的に多様な出演者と愛嬌たっぷりのマペットたちが登場し、半世紀間子供たちを魅了してきた『セサミストリート』。テレビを教育目的に利用し、子供たちの成長を助けたいという理想をどう受け継ぐか>

今から半世紀前、子供向け番組の革命的アプローチが生まれた。『セサミストリート』の生みの親ジョーン・ガンツ・クーニーがテレビを教育目的に利用し、子供たちの成長を助けたいと考えたのだ。

この構想の下、教育専門家、脚本家、プロデューサーがワークショップを結成。人種的に多様な出演者と愛嬌たっぷりのマペットが登場する、ファンタジーと現実を織り交ぜた番組を制作した。1969年11月に放送が始まると、『セサミストリート』はたちまち子供たちを魅了した。

ちょうどその頃、もう1人の先見の明あるプロデューサーが子供たちのために別の角度からテレビを活用できないかと考えた。一人一人の子供を尊重し、子供が自分の気持ちを表現するのを助けるような番組を作れないか、と。

長老教会の牧師でもあったフレッド・ロジャースは気さくで穏やかな「近所のおじさん」のようにテレビ画面を通じて子供たちに語り掛け、日々の喜びや悲しみにどう向き合えばいいのか、ヒントを与えようとした。

こうして生まれたのが伝説的な人気番組『ミスター・ロジャース・ネイバーフッド』だ。子供時代にこうした画期的な番組に夢中になった私は、大人になると今度は自分が作る側に回りたいと思った。子供たちが楽しく遊びながら学べる人気番組を作りたい、と。

だが25年ほど前に私が仕事を始めた当時、子供番組はクーニーとロジャースの理想から後退しているようだった。商業的には成功しても教育的な価値はない番組が幅を利かしていた。

それが私のやる気に火を付けた。子供番組のパイオニアたちが築いた土台を基に、彼らの理想をさらに推し進めよう。そんな思いから仲間たちと制作したのが96年放送開始の『ブルーズ・クルーズ』だ。

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