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日本を誤導──安倍首相「国賓招聘のため」習主席と会談

2019年12月26日(木)14時10分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

他の拘束逮捕された日本人14人の中には、理由も言われないまま懲役刑まで下された者がいる。本来なら拘束逮捕理由および判決文を明らかにさせ、それが出来ないなら国賓招聘は取り消すと言わなければならない。しかし現実は「中国であるなら邦人拉致も止む無し」と習近平に媚びへつらっている。

このような人権無視の国家のリーダーを、このまま国賓として招聘することが、民主主義国家として許されるのか。国賓として来日すれば天皇陛下に拝謁することを意味する。そして必ず中国は又もや天皇陛下の訪中を要求してくる。

となれば日本国は「国家」として中国の人権侵害と言論弾圧を肯定することを全世界に宣言するだけでなく、日本国の象徴である天皇陛下を、その危険な陰謀の中に巻き込むことを「是」としていることを世界に発信することになる。これはアメリカを凌駕して世界を制覇しようとしている中国に手を差し伸べていることを意味する。

まるで、第二次世界大戦前夜のような「暗黒の選択」に手を付け始めていることに、安倍首相は気が付かないのだろうか?

一党独裁の全体主義国家・中国が地球上最大の民主主義国家・アメリカの軍事力を凌駕すれば、どういう明日が待っているか想像がつくだろう。それはヒットラーのドイツと手を結んだかつての日本を彷彿とさせる。いま安倍首相が中国を持ち上げることは即ち、中国の軍事力の基盤をなす経済の衰退を未然に防ぎ、中国の軍事力を高めてあげることにつながる。

安倍首相はいま自分が何をしようとしているのか、分かっているのだろうか?

中国では「安倍・習近平」会談をどのように報じたか

中国共産党新聞網や、新華網あるいは中央テレビ局CCTVなど数多くあるが、そのどれを取っても、習近平が言ったことと安倍首相が答えたことは、日本の報道とはまるで違う。

大きな相違点だけでも以下に示す。

【1】習近平はまず、安倍首相に「四つの政治文書」を絶対に守れ、それが前提だとしている。「四つの政治文書」の根幹にあるのは1972年9月29日に発表された中日共同声明や1978年8月12日に署名された中日平和友好条約などにある「一つの中国」原則だ。すなわち絶対に台湾を国家(中華民国)とみなしてはならず、台湾はあくまでも中国(中華人民共和国)の一部であるという「大原則」だ。これを誓わされたということは、「私は絶対に台湾の独立を認めません」という誓いを立てたことを意味する。現在の蔡英文政権を「絶対に支持しない」ことを誓ったに等しいのである。外務省報道にも、また他の日本の報道にも、そのようなことは一言も書いてない。しかし、中国にとっては、これは最重要事項なのである。

【2】習近平は「双方は実務的な協力を切り拓かなければならず、共にハイレベルの"一帯一路"を推進し、中日による第三市場を推進していかなければならない」と明確に言っているが、日本では、こういうことは削除されている。安倍首相が習近平の要求に対して「日本は喜んで中国と共に第三市場における協力を積極的に推進していく」と答えたと中国側は報道している。

なお、日本の報道の中で最も正確に報道しているのは産経新聞で、そこには先述の香港・ウイグル問題に関して習近平が「内政干渉だ」と一蹴したことも書いてあるし、また北朝鮮問題に関して、以下のように書いてある。

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