最新記事

日本政治

「桜を見る会」問題、ホテル前夜祭「値引き」疑惑の深層

A Cherry Blossom Storm

2019年12月13日(金)16時10分
北島 純(社会情報大学院大学特任教授)

magw191210_Japan2.jpg

ホテルニューオータニで開催された2つの催事が問題に NEWSWEEK JAPAN

問題は値引きだ。現時点では、値引きが実際にあったかどうか、という実態は明確になっていない。政治家の政治資金パーティーといっても、ホテル側は閣僚クラスでもそう簡単には値引きしない。だからこそ政治家の事務所側は、料理の質をなるべく落とし、用意する量も減らして、利益をなんとか確保する。今回参加者が払った5000円に「見合った」質と量の料理が提供されていただけなら、そして参加者がホテルに対して直接支払っていたのならば、寄付にも献金にも当たらず、政治資金収支報告書に記載がなくとも問題はない。

しかし、値引きが実際にあった場合、問題は別の次元で生じることになる。もちろん値引き自体は私企業の営業活動としてあり得るだろう。だがその値引きが他の取引との対価性を有し、そしてその相手方が政府であった場合はどうか。

「桜を見る会」の前日に行われたニューオータニでの前夜祭におけるホテル側の「利益供与」と、一見無関係の即位礼正殿の儀の翌日の10月23日に行われた首相夫妻主催晩餐会をホテルが「受注」したこととの関連性──つまり対価性が問題となる。

各国から要人が参列する晩餐会は最も格式が高い行事の1つであり、それを東京で催行できるホテルは、帝国ホテル、ホテルオークラ、パレスホテル、高輪プリンスホテル、そしてニューオータニといった大ホテルに限られる。そうしたホテルの中で今回、ニューオータニが晩餐会受注に成功した。当日の華麗な式典の様子をメディアで見た人も多いだろう。

この晩餐会をニューオータニが受注したことの背景に、「桜を見る会」前夜祭での利益供与があったと仮に位置付けるとしたら、少なくとも外形上は、典型的な贈収賄のスキームを疑ってみるべき事案になる──。こういう指摘が今、なされつつある。

安倍政権の「説明責任」

もちろん個別の事情を踏まえた適正な選定だったのかもしれない。例えばパレスは今回多くの王族が宿泊しており、オークラも建て替えたばかりだった。晩餐会対応がそもそも難しく、安全確保やコスト等を考慮して、ニューオータニが選ばれたという可能性も十分にあろう。

しかし、首相の側近中の側近として絶大な影響力を誇り、「史上最強の首相秘書官」の1人として評価の高い人物の親族がニューオータニの社外取締役であったという報道も出ている現在、もはやそうした一般論の説明では十分ではないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

パキスタンとアフガン、即時停戦に合意

ワールド

台湾国民党、新主席に鄭麗文氏 防衛費増額に反対

ビジネス

テスラ・ネットフリックス決算やCPIに注目=今週の

ワールド

米財務長官、中国副首相とマレーシアで会談へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本人と参政党
特集:日本人と参政党
2025年10月21日号(10/15発売)

怒れる日本が生んだ「日本人ファースト」と参政党現象。その源泉にルポと神谷代表インタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    ニッポン停滞の証か...トヨタの賭ける「未来」が関心呼ばない訳
  • 4
    ギザギザした「不思議な形の耳」をした男性...「みん…
  • 5
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 6
    大学生が「第3の労働力」に...物価高でバイト率、過…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「リンゴの生産量」が多い国…
  • 8
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以外の「2つの隠れた要因」が代謝を狂わせていた
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 5
    中国人が便利な「調理済み食品」を嫌うトホホな理由…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    メーガン妃の動画が「無神経」すぎる...ダイアナ妃を…
  • 8
    時代に逆行するトランプのエネルギー政策が、アメリ…
  • 9
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 10
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 6
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 7
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 8
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中