最新記事

米中関係

中国「断固とした報復措置」明言 トランプ、香港デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名

2019年11月28日(木)18時40分

11月27日、トランプ米大統領は香港のデモ隊を支援する法案に署名した。フロリダ州の選挙集会で26日撮影(2019年 ロイター/Yuri Gripas)

トランプ米大統領は27日、香港の反政府デモを支援する「香港人権・民主主義法案」に署名し、同法は成立した。中国政府は28日、「断固とした報復措置」を取ると表明し、香港に干渉しようとする試みは失敗すると警告した。

中国外務省は声明で、香港を巡り米国が「独断的な行動」を続ければ、米国は中国の報復措置の影響を受けることになるとした。

香港政府は、同法の成立はデモ参加者に誤ったシグナルを送り、香港の内政に「明らかに干渉」するものだと反発した。

法案は前週、上院を全会一致で通過し、下院では1人を除く全員による賛成で可決された。中国は内政干渉で国際法違反に当たると強く反発していた。

香港に高度の自治を保障する「一国二制度」が守られ、米国が香港に通商上の優遇措置を与えるのが妥当かどうか、少なくとも1年に1回検証することを国務省に義務付けている。香港で起きた人権侵害の責任者には制裁が科せられる。

トランプ氏は香港港警察向けに催涙ガスや催涙スプレー、ゴム弾、スタンガンなど特定の軍用品を輸出することを禁じる法案にも署名した。

トランプ氏は声明で「習近平中国国家主席と香港の市民に対する尊敬から、これらの法案に署名した。中国と香港の指導者と代表者が対立を友好的に解消し、長期的な平和と繁栄をもたらすことを願うものだ」と説明した。

来年の大統領選に向けて中国との通商合意を最優先とするトランプ氏は、これまで法案に署名するか拒否権を発動するか明確にしていなかった。

関係筋によると、議会が法案を可決した後、トランプ氏が支持した場合に通商交渉に悪影響が及ぶかどうか大統領の側近が協議した。最終的には大半がデモ参加者への支持を示すために署名することを勧めたという。

法案が圧倒的賛成多数で議会を通過しており、拒否権を行使しても再可決される可能性があったことや、香港の区議会選挙で民主派が圧勝したことも、判断材料になったとしている。

共和党のルビオ上院議員は、トランプ氏の署名を歓迎する立場を表明。「中国が香港の問題に介入したり影響力を行使したりすることを阻止する新たな意味のある手段を米国は手にした」とする声明を発表した。

関係者の多くは、人権法は象徴的なものだが、発動されれば米国と香港の関係が変わる可能性があるとの見方を示している。

米国は香港に特別な地位を与えており、米国もこれによる恩恵を受けているため、そうした扱いをやめるのは自滅行為だとアナリストは指摘する。香港が単なる中国の一港湾都市になれば、香港を仲介役や中継地として利用していた企業は、取引を他の地域に移行する公算が大きい。

ただし、大統領には安全保障や国益に基づいて発動を停止する権限も認められている。

中国は反発

中国政府は「一国二制度」を堅持すると表明。外国勢力が社会不安を煽っていると改めて批判した。

外務省は声明で「この法律と呼ばれているものは、香港市民も含め中国人民の決意を強めるだけだ。米国の邪悪な意図と覇権主義的な性格を浮き彫りにするだけだ」と表明。「米国の策略は不毛だ」と述べた。

外務省報道官は定例会見で、具体的にどのような報復措置を検討しているのかとの質問にコメントを控え「注目しておいたほうがいい。来るべきものが来る」と述べた。

商務省報道官は定例会見で、今回の法律制定が米中貿易交渉に悪影響を及ぼすかについて直接のコメントを避け、交渉の進展について新たに公表すべき詳細はないと述べた。

*内容を追加しました。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20191203issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

12月3日号(11月26日発売)は「香港のこれから」特集。デモ隊、香港政府、中国はどう動くか――。抵抗が沈静化しても「終わらない」理由とは? また、日本メディアではあまり報じられないデモ参加者の「本音」を香港人写真家・ジャーナリストが描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ウクライナはモスクワ攻撃すべきでない」

ワールド

米、インドネシアに19%関税 米国製品は無関税=ト

ビジネス

米6月CPI、前年比+2.7%に加速 FRBは9月

ビジネス

アップル、レアアース磁石購入でMPマテリアルズと契
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:AIの6原則
特集:AIの6原則
2025年7月22日号(7/15発売)

加速度的に普及する人工知能に見えた「限界」。仕事・学習で最適化する6つのルールとは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パスタの食べ方」に批判殺到、SNSで動画が大炎上
  • 2
    日本より危険な中国の不動産バブル崩壊...目先の成長だけ追い求め「失われた数百年」到来か?
  • 3
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」だった...異臭の正体にネット衝撃
  • 4
    真っ赤に染まった夜空...ロシア軍の「ドローン700機…
  • 5
    「このお菓子、子どもに本当に大丈夫?」──食品添加…
  • 6
    「史上最も高価な昼寝」ウィンブルドン屈指の熱戦中…
  • 7
    約3万人のオーディションで抜擢...ドラマ版『ハリー…
  • 8
    「オーバーツーリズムは存在しない」──星野リゾート…
  • 9
    「巨大なヘラジカ」が車と衝突し死亡、側溝に「遺さ…
  • 10
    歴史的転換?ドイツはもうイスラエルのジェノサイド…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 7
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 10
    「二度とやるな!」イタリア旅行中の米女性の「パス…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中