最新記事

日韓関係

韓国の「リトル東京」から日本人が消える?

2019年11月22日(金)15時30分
佐々木和義

単身赴任者の割合がさらに高まる可能性

日韓関係が悪化した李明博政権の頃から日本人のリトル東京離れがはじまった。家族を帯同しない駐在員が増えたのだ。北朝鮮がミサイルを発射すると単身で赴任する駐在員が急速に増加する。昨今の国交回復以降で最悪といわれる日韓関係やGSOMIA終了後の北朝鮮動向によって、単身赴任者の割合がさらに高まる可能性は否めない。

帯同した子をソウル日本人学校に通学させる方法は2つしかない。父母が直接送迎するか、リトル東京を発着するスクールバスを利用するかだ。通学を必要とする子を帯同していない駐在員の居住地は「リトル東京」に限らない。人件費の高騰もリトル東京離れに拍車をかけた。企業側も役員として赴任する駐在員の送迎をやめることが多くなり、事務所近くに居住する傾向が強まった。

さらに、子を帯同する駐在員もリトル東京を離れている。2010年10月、ソウル日本人学校は江南区開浦洞(ゲポドン)から麻浦区上岩洞に移転した。1980年に建設された校舎は老朽化が進み、日本人学校を運営するソウル・ジャパンクラブは、地価が高騰した江南区の敷地を売却し、その売却益でソウル市が外国人学校を誘致していた上岩洞に新築移転した。移転当時は土地開発がはじまったばかりだったが、生活施設が充実すると、学校に直接送迎できる上岩洞への居住者が増えはじめる。東部二村洞は高級住宅街と認識され、家賃は高額で物価も高い。東部二村洞と上岩洞の新築マンションの家賃は倍近い開きがあるのだ。

常時5万人から6万人の在韓日本人の3分の2が韓国居住者

市町村に相当する韓国の市郡区は226。外務省が公表する直近データで、日本人居住者がいない行政区は1郡のみである。赴任や留学などソウル生活をはじめたばかりの日本人は、日本人が多い地区を選択するが、在韓年数が長い人など日本人が少ない地区を選ぶ人もいる。

韓国での日系のビジネス界は、コミュニティが親密で顔見知りが多く、日本人が経営する日本料理店が社交場の様相を呈すことは珍しくない。出勤時にマンションのエレベータ等で毎日のように顔を合わせる人たちもいる。日本人居住者が100人近いマンションで暮らす女性駐在員は、同じマンションに日本人が多いのは安心だが、取引先が多く、近所の買い物や敷地内のゴミ捨てなど、部屋を出るたびに服装を整えて化粧をするのが大変と話す。

韓国の出入国記録によると常時5万人から6万人の日本人が韓国にいるという。その3分の2が韓国に居住する日本人である。日韓関係や北朝鮮の動向など、日本と韓国を取り巻く状況の変化が在韓日本人の居住環境に影響を及ぼしている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:自動車業界がレアアース確保に躍起、中国の

ワールド

アングル:特産品は高麗人参、米中貿易戦争がウィスコ

ワールド

トランプ米大統領、日韓などアジア歴訪 中国と「ディ

ビジネス

ムーディーズ、フランスの見通し「ネガティブ」に修正
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 2
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任務戦闘艦を進水 
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 5
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 6
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    「宇宙人の乗り物」が太陽系内に...? Xデーは10月2…
  • 9
    為替は先が読みにくい?「ドル以外」に目を向けると…
  • 10
    アメリカの現状に「重なりすぎて怖い」...映画『ワン…
  • 1
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 2
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 3
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 4
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 8
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 9
    【2025年最新版】世界航空戦力TOP3...アメリカ・ロシ…
  • 10
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 4
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 5
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中