最新記事

イスラム国

ISが東南アジアを狙っている──マレーシア内相

ISIS Seeking To Move Base To Southeast Asia After Baghdadi Death

2019年11月29日(金)16時00分
ジェームズ・パターソン

インドネシア、バリ島爆弾テロの慰霊碑。イスラム教テロ組織の犯行で、2002年に200人以上の死者を出した Beawiharta-REUTERS

<外国人戦闘員の帰国やインターネットを通じた過激化の脅威もあり東南アジアも安穏としてはいられないとマレーシアの内相が警告>

最高指導者のアブ・バクル・アル・バグダディを失った過激派組織IS(イスラム国)が、東南アジアを次なる活動拠点にしようと狙っている――マレーシアのムヒディン・ヤシン内相がこう警告した。バグダディは10月下旬、米陸軍の第75レンジャー連隊と特殊部隊デルタフォースがシリアで展開した急襲作戦で追いつめられ、子ども2人を巻き添えにして自爆した。

ヤシンは11月27日、タイのバンコクで開催された「ASEAN国境を超える犯罪に関する閣僚会議」に出席。この中で「シリアとイラクにおける支配地域のほとんどを失ったダーイシュ(アラビア語でISISのこと)は、新たな拠点を探している。マレーシアは、ダーイシュが活動拠点を東南アジアに移す可能性もあると考えている。テロ組織の外国人戦闘員の帰国やインターネットを通じた過激化、組織に属さないローンウルフ(一匹狼)型テロリストによる攻撃などの脅威も高まっている」と警告した。

パスポートが簡単に買える

米国務省でテロ対策を担当するネイサン・セールス調整官は、東南アジアで「ごく最近になってみられるようになった現象」に自爆テロがあると指摘。これは、ISの戦闘員が中東の外にテロ攻撃のテクニックや手順を「輸出」している証拠だと主張した。

東南アジアに流入しているISのテロリストの数は、現時点では少ないと考えられている。だが巧妙に作成された偽造パスポートや盗難パスポートが出回るようになれば、その数は増えていく可能性がある。

アルカイダと関連がある東南アジアのイスラム過激派組織、ジェマ―・イスラミア(JI)の元戦闘員ナシル・アバスは、香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙に対して、そうしたパスポートが戦闘員たちの移動に役立っていると語った。

「盗難パスポートの転売業者がいて、パスポートが欲しい者は自分と顔の特徴が似ている写真がついたパスポートを買うことができる」と、マレーシア出身の彼は語った。「転売業者は大量の盗難パスポートをストックしているから、選択肢の幅も広い」。アバス自身かつて、インドネシア人のパスポートを買い取ってフィリピン南部に渡り、そこで戦闘員の訓練キャンプを立ち上げたという。

<参考記事>「少女自爆」のボコ・ハラムはISを上回る世界一の殺戮集団
<参考記事>IS戦闘員の「自撮り」写真で空爆地点がバレバレに

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、中東に戦闘機を移動 地域の安全保障支援へ=スタ

ワールド

イスラエル、イランガス田にも攻撃 応酬続く 米・イ

ワールド

米首都で34年ぶり軍事パレード、トランプ氏誕生日 

ワールド

米ミネソタで州議員が銃撃受け死亡、容疑者逃走中 知
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 2
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 3
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生きる力」が生んだ「現代医学の奇跡」とは?
  • 4
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 5
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 6
    構想40年「コッポラの暴走」と話題沸騰...映画『メガ…
  • 7
    逃げて!背後に写り込む「捕食者の目」...可愛いウサ…
  • 8
    「結婚は人生の終着点」...欧米にも広がる非婚化の波…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    メーガン妃の「下品なダンス」炎上で「王室イメージ…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ふわふわの「白カビ」に覆われたイチゴを食べても、…
  • 7
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 8
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 9
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中