最新記事

韓国

GSOMIA失効と韓国の「右往左往」

2019年11月14日(木)11時36分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

日韓の国旗(日本国旗は、在日韓国大使館に日本の政治団体が抗議で掲げたもの。2012年) Yuriko Nakao-REUTERS

11月23日を以てGSOMIAが失効する。撤回は困難だろう。8日には在韓米軍駐留費の5倍増を韓国は拒否。一方、米韓合同軍事演習だけはするので北の激怒を招いた。韓国の右往左往と東アジアの地殻変動を考察する。

GSOMIA破棄の撤回は困難

今月23日に日韓のGSOMIA(軍事情報包括保護協定)が失効する。8月22日に韓国はGSOMIA破棄を宣言したのだが、その2日前の20日には中韓外相会談を行っており、もし継続すれば国交断絶もあり得るというほどの威嚇を中国側から受けていた。なぜなら日韓GSOMIAは、北朝鮮や中国などの軍事動向を偵察して、秘密裏に日本に通報するためのものだからだ。

アメリカがINF(中距離核戦力)全廃条約から離脱した後に、逆に中距離弾道ミサイル開発を積極的に強化し、その配備(ポストINF)を韓国やオーストラリアあるいは日本などに要請してきたが、それを含めて中国は韓国に激しい揺さぶりをかけていた。

そこに日本が半導体3品目の輸出審査の厳格化やホワイト国除外などの対韓輸出規制に踏み切ったものだから、中国としては日韓の亀裂を喜び、一気に韓国を中国側に引き付けようと韓国に圧力を掛けていたのである。もしポストINFの配備を承諾などしたら、THAAD(サード)配備の時のような経済制裁では済まされないと脅していたのだ。

だから韓国は当然のごとくポストINFの配備を断ったが、同時進行で日本からのホワイト国除外という厳しい措置を受けていたため、GSOMIA破棄を宣言したのであった。

しかし、そうしておきながら、韓国内の経済の低迷や反日一辺倒では世論を引き寄せることができないことに気が付いた文在寅大統領は、親日派の李洛淵(イ・ナギョン)首相を使って日本にすり寄るようなメッセージを発信させている。これは早くも8月26日に実行され、李洛淵に「日本の不当な措置が元に戻れば、韓国政府もGSOMIAを再検討するのが望ましい」と述べさせている(これに関しては8月27日付コラム<嘘つき大統領に「汚れ役」首相――中国にも嫌われる韓国>で詳述した)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 2
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い国」はどこ?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 8
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中