最新記事

北朝鮮

北朝鮮「新型SLBM実験に成功」 米朝協議以降、最も挑発的行為

2019年10月3日(木)16時35分

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は、2日朝に新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」の実験が行われ、成功したと伝えた。提供写真(2019年 ロイター/KCNA via REUTERS)

北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は3日、2日朝に新型の潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「北極星3」の実験が行われ、成功したと伝えた。

KCNAは、金正恩朝鮮労働党委員長が実験の関係者に「温かい祝意」を送ったとしており、金氏が発射に立ち会わなかったことを示唆した。

北朝鮮は1日、非核化を巡る米国との実務者協議を再開すると発表しており、今回のミサイル発射は米国の出方を試す狙いもあるとみられる。アナリストは、2018年に米朝協議が始まって以降で北朝鮮による最も挑発的な行為だと指摘している。

KCNAは「朝鮮民主主義人民共和国に対する外国勢力の脅威を抑制し、国の自衛的軍事力を一段と強化するという新たな局面につながるという点で、新型SLBMの試射は大きな意義がある」と指摘した。

さらに、ミサイル発射実験が「近隣諸国の安全に悪影響を及ぼすことはない」と説明した。

KCNAは、北極星3は東部元山市の沖合から「垂直モード」で発射したと説明しており、角度をつけて高く打ち上げる「ロフテッド軌道」で打ち上げられたとの韓国軍の見方を裏付けた。

ミサイル発射実験を1面2ページにわたって報じた朝鮮労働党機関紙、労働新聞に掲載された写真では、白と黒に塗装されたミサイルが水面を突き抜け、ロケットのエンジンが点火して上空に打ち上がる様子が確認できる。

3人のアナリストによると、北極星3は2016年に試射された旧来型ミサイルの射程距離と安定性を改良した最新版とみられる。

韓国の慶南大学の軍事専門家は、北極星3は実験の最終段階となる潜水艦からの発射ではなく、発射台から打ち上げられた可能性が高いとの見方を示している。

KCNAは7月、金委員長が新たに建造された大型潜水艦を視察したことを伝えたが、韓国の聯合ニュースによると、同国軍関係者は3日、これについて潜水艦はまだ未完成のようだとの見解を示した。

金委員長は今回の北極星3の発射に立ち会わなかったとみられているが、慶南大学の専門家は「非常にまれだ」とし、米朝実務者協議が再開前に取りやめになる可能性など政治的な影響を考慮したのではないかとの見方を示した。

韓国当局は2日、ミサイルは450キロ飛行し、高度910キロに到達したとし、今回の発射は意図的に角度をつけて高く打ち上げ、飛距離を縮めた可能性があると指摘。通常の射程は約1300キロとみられるとの見解を示した。

全米科学者連盟(FAS)のアンキット・パンダ氏は、今回の発射について、射程距離が最も長い固形燃料式ミサイルの可能性があり、核兵器搭載が可能なミサイルの実験としては2017年11月以来とみられると指摘した。

北朝鮮の発表によると、米朝は5日に実務者協議を実施する。

韓国の聯合ニュースが空港関係者の話として伝えたところによると、非核化交渉の北朝鮮首席代表を務める金明吉(キム・ミョンギル)氏は3日、北京の空港に到着し、スウェーデンのストックホルム行きの便を予約した。

聯合ニュースによると、金明吉氏は北京で記者団に「朝米実務レベル交渉に向かう」とし「米国側から新たなシグナルがあった。結果を楽観し、大いに期待して(交渉に)向かう」と述べた。

*内容を更新して再送します。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191008issue_cover200.jpg
※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

仏GDP、第3四半期確報は前期比+0.5% 速報値

ワールド

東南アジアの洪水、死者183人に 救助・復旧活動急

ビジネス

電気・ガス代支援と暫定税率廃止、消費者物価0.7ポ

ワールド

香港火災、死者128人に 約200人が依然不明
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 2
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファール勢ぞろい ウクライナ空軍は戦闘機の「見本市」状態
  • 3
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 4
    【寝耳に水】ヘンリー王子&メーガン妃が「大焦り」…
  • 5
    【クイズ】次のうち、マウスウォッシュと同じ効果の…
  • 6
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 7
    「攻めの一着すぎ?」 国歌パフォーマンスの「強めコ…
  • 8
    がん患者の歯のX線画像に映った「真っ黒な空洞」...…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    7歳の娘の「スマホの検索履歴」で見つかった「衝撃の…
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで墜落事故、浮き彫りになるインド空軍の課題
  • 3
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やってはいけない「3つの行動」とは?【国際研究チーム】
  • 4
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 5
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 6
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 7
    【最先端戦闘機】ミラージュ、F16、グリペン、ラファ…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 10
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中