最新記事

中東

トランプ「無策」外交でさらに遠のく中東からの米軍撤退

Trump and “Endless Wars”

2019年10月17日(木)18時00分
ジョシュア・キーティング

このままトルコ軍がシリアでクルド人への攻撃を続ければ、クルド人武装勢力が拘束していた何千人ものテロリストが野に放たれ、シリアが再びリアルな戦場となる。イラクでも反政府デモの激化で治安が悪化している。ISISのようなテロ組織が再び息を吹き返す条件は、既に熟した。

実を言うと、トランプが忌み嫌うオバマ政権の下でも似たような状況があった。オバマ政権は2011年にイラクから米軍を撤退させ、外交的な関与もやめ、あとは民主的に選ばれたはずのイラク政府に任せるつもりだった。ところがイラク政府は独裁色と党派性を強め、治安の混乱とISISの台頭を招いた。そしてテロリストの脅威が高まり、クルド人やシーア派住民への残虐行為が横行するなかで米軍は再びイラクに戻り、ついにはシリアまで出掛けて行って戦うことになった。

問題がアメリカへの直接的なテロの脅威か、それともアメリカの世論が許さない人道上の危機かどうかはともかく、アメリカが再びイラクやシリアで本格的な戦闘に巻き込まれる可能性は急速に高まっている。その時にはもう、トランプは大統領ではないかもしれないが。

©2019 The Slate Group

<本誌2019年10月22日号掲載>

【参考記事】クルド人を見捨てたのはアメリカだけではない
【参考記事】トルコの侵攻を黙認する見返りに、米国、ロシア、シリア政府が認めさせようとしていること

20191022issue_cover200.jpg
※10月22日号(10月16日発売)は、「AI vs. 癌」特集。ゲノム解析+人工知能が「人類の天敵」である癌を克服する日は近い。プレシジョン・メディシン(精密医療)の導入は今、どこまで進んでいるか。


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 3
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 4
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 5
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 6
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 7
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 8
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 9
    【クイズ】未踏峰(誰も登ったことがない山)の中で…
  • 10
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 9
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 10
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中