最新記事

香港デモ

香港政府、半世紀ぶりの「緊急状況規則条例」適用検討 デモ抑圧にマスク禁止か

2019年10月4日(金)07時53分

抗議活動が激化している香港で、政府が4日に「緊急状況規則条例」の適用を検討する方針であることが3日、複数の関係筋の話で明らかになった。写真はマスクをするデモ参加者ら(2019年 ロイター/SUSANA VERA)

抗議活動が激化している香港で、政府が4日に「緊急状況規則条例」の適用を検討する方針であることが3日、複数の関係筋の話で明らかになった。条例の下、抗議活動の際に参加者がマスクなどで顔を覆うことが禁止される可能性がある。

1日の衝突で警察が実弾を発砲し、18歳の男性が至近距離で撃たれたことに反発が強まっており、抗議活動は一段と激化している。

こうした中、関係筋2人はロイターに対し、香港政府が4日朝に会議を開き、緊急状況規則条例の適用を検討する可能性があることを明らかにした。適用されれば半世紀ぶりとなる。

多くのデモ参加者は身元を隠すためや催涙ガスから身を守るためにフェイスマスクを着用しているが、当局が反政府デモの暴力行為抑制に向け集会でのフェイスマスク着用を禁止すると地元メディアのTVBとケーブルTVが報じたことを受け、香港株式市場は1週間ぶりの高値に上昇した。

中国建国70周年に当たる1日、反政府デモとの衝突で警察が実弾を発砲し、18歳の男性が至近距離で撃たれた。約4カ月にわたる抗議運動で実弾による負傷者が出たのは初めて。1日の衝突では警官隊は実弾6発のほか、1400弾を超える催涙弾、約900弾のゴム弾を発射。100人を超える負傷者が出た。

香港当局は3日、撃たれた男性を警官襲撃の罪で起訴。有罪と判断されれば最高刑は禁錮10年となる。

このほか、ロイターが入手した文書から、香港警察が中国建国記念日の抗議デモに向け武力行使に関するガイドラインを緩和していたことも判明。文書によると、警官が武力行使を考えた場合の行動に関するガイドラインを一部変更するとともに、警官が自身の行為に責任を負うべきとした文言がマニュアルから削除された。緊迫した状況下で警察のデモ制圧能力を高めることになる。

地元メディアはガイドラインは9月30日に変更されたと報道。ロイターは具体的にいつ変更されたのかは確認できていない。香港警察はガイドラインの変更についてコメントは控えた。

抗議活動が激化する中、警察官で構成する香港警察隊員佐級協会は、林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官に対し、夜間外出禁止令を発令するよう要請。声明で「法律の下、われわれは権限が限定された執行機関に過ぎない。こうした相次ぐ大規模な暴動に直面する中、トップレベルの適切な措置と支援なしで単独で任務を果たせない」と訴えた。

ゴールドマン・サックスは抗議活動の激化を受け、6─8月に香港から最大40億ドルの預金が流出したと試算。シンガポールなどに流れたとしている。

[香港 3日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます




20191008issue_cover200.jpg
※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。



今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英、イスラエルとの貿易交渉一時停止 ガザ攻撃巡り大

ワールド

EUと英国、ロシアに停戦圧力 「影の船団」標的に追

ワールド

石破首相、江藤農水相を更迭する方向で調整=報道

ビジネス

米関税政策、世界金融システム・経済成長にリスク=ス
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:関税の歴史学
特集:関税の歴史学
2025年5月27日号(5/20発売)

アメリカ史が語る「関税と恐慌」の連鎖反応。歴史の教訓にトランプと世界が学ぶとき

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到した理由とは?
  • 3
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国は?
  • 4
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 5
    【裏切りの結婚式前夜】ハワイにひとりで飛んだ花嫁.…
  • 6
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 7
    「空腹」こそが「未来の医療」になる時代へ...「ファ…
  • 8
    小売最大手ウォルマートの「関税値上げ」表明にトラ…
  • 9
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 10
    トランプは日本を簡単な交渉相手だと思っているが...…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」する映像が拡散
  • 4
    中ロが触手を伸ばす米領アリューシャン列島で「次の…
  • 5
    「運動音痴の夫」を笑う面白動画のはずが...映像内に…
  • 6
    コストコが「あの商品」に販売制限...消費者が殺到し…
  • 7
    ヤクザ専門ライターが50代でピアノを始めた結果...習…
  • 8
    【クイズ】世界で1番「太陽光発電」を導入している国…
  • 9
    トランプ「薬価引き下げ」大統領令でも、なぜか製薬…
  • 10
    サメによる「攻撃」増加の原因は「インフルエンサー…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
  • 5
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの…
  • 6
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 7
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 8
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 9
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 10
    ワニの囲いに侵入した男性...「猛攻」を受け「絶叫」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中