最新記事

韓国

「独島が韓国の領土であるとの証拠は何もない」韓国ベストセラー書の衝撃的な内容

2019年10月1日(火)16時45分
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載

竹島(韓国名・独島)の警備にあたる韓国警察 Lee Jae Won-REUTERS

<「独島問題」が韓国内で論争になること自体が初めてだが、だからと言って韓国世論が日本の見方に歩み寄ることはない>

韓国外務省のイ・サンリョル・アジア太平洋局長代理は9月27日、日本政府が同日の閣議で了承した2019年版の防衛白書は日本の周辺国の軍事動向を説明する部分で、前年版と同じく「わが国固有の領土である北方領土や竹島の領土問題が依然として未解決のまま存在する」と記したことを受け、在韓日本大使館の実生泰介公使(総括公使代理)を呼び抗議した。

「不快でも仕方ない」

また、韓国国防省も同様に、在韓日本大使館の武官を呼んで抗議している。 

韓国において「独島(竹島)問題」は、他の歴史問題と同じく非常に敏感なイシューだ。他の歴史問題については「もう過去のことだから」という見方も出来るが、領土問題は現在進行形であるだけに、いっそう難しいとも言える。

もっとも、韓国は島を実効支配しているのだから、日本からの抗議に「聞こえないふり」を決め込む方が得策ではないかとも思えるが、韓国国民としては、「また日本に国を取られる」との恐怖感があるのかもしれない。

そんな敏感な問題にもかかわらず、韓国のベストセラー書籍『反日種族主義』は、「独島問題」について、韓国における定説を覆す主張を展開している。

李栄薫(イ・ヨンフン)元ソウル大学教授ら6人の研究者が執筆した同書は植民地統治下の朝鮮半島で「日本による土地やコメの収奪はなかった」「従軍慰安婦の強制連行はなかった」などと主張し、韓国で物議を醸している。

同書に書かれている「独島問題」に対する見解の詳細は、おそらく日本では数多く論じられてきた内容であると思われるため省略するが、李栄薫氏の次の記述は韓国国民にとっては衝撃的だろう。

「今日、韓国政府が独島問題を国際司法裁判所に持ち込もうという日本政府の主張を受け入れられない境遇にあることは、皆がよく知る事実です。率直に言って、韓国政府が、独島が歴史的にその固有の領土であることを証明するために、国際社会に提示できる証拠はひとつも存在しないのが実情です。読者の皆さんは不快に思うかも知れませんが、国際司法裁判所の公平な法官たちは、そのように判断するはずです。私はひとりの知識人として、その点を指摘せずにはいられません」

もちろん、同書に対しては韓国国内で様々な反論が出ており、これがかならずしも日韓の歴史の「決定版」とは言えない。ただ、「独島問題」が同国内で論争になったこと自体、これが初めてだろう。

参考記事:「この国は嘘つきの天国」韓国ベストセラー本の刺激的な中身

しかしだからと言って、韓国世論がこの問題で日本の見方に歩み寄ることはないだろう。今後、ほかの歴史問題が解決することがあるのかないのかもわからないが、仮に解決していくにしても、「独島問題」は最後の最後まで残り続けるように思える。

参考記事:「韓国外交はひどい」「黙っていられない」米国から批判続く

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「NKNews」からの転載記事です。

dailynklogo150.jpg



ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

石油・ガスは今後も重要、燃料としてではない可能性も

ワールド

米感謝祭前の旅客便、政府閉鎖で「ごくわずか」に=米

ビジネス

カナダ、10月雇用が予想外に増加 トランプ関税に苦

ワールド

米国務長官と会談の用意ある、核心的条件は放棄せず=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評家たちのレビューは「一方に傾いている」
  • 2
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一撃」は、キケの一言から生まれた
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    レイ・ダリオが語る「米国経済の危険な構造」:生産…
  • 7
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 8
    「非人間的な人形」...数十回の整形手術を公表し、「…
  • 9
    「爆発の瞬間、炎の中に消えた」...UPS機墜落映像が…
  • 10
    「豊尻」施術を無資格で行っていた「お尻レディ」に1…
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 5
    「座席に体が収まらない...」飛行機で嘆く「身長216c…
  • 6
    「遺体は原型をとどめていなかった」 韓国に憧れた2…
  • 7
    「路上でセクハラ」...メキシコ・シェインバウム大統…
  • 8
    虹に「極限まで近づく」とどう見える?...小型機パイ…
  • 9
    クマと遭遇したら何をすべきか――北海道80年の記録が…
  • 10
    筋肉を鍛えるのは「食事法」ではなく「規則」だった.…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中