最新記事

東南アジア

インドネシア、第2期ジョコウィ政権発足 政党力学で妥協の人事は前途多難

2019年10月23日(水)19時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

今回の組閣での目玉といえるのがゴジェック元CEOのナディム・マカリム氏の起用だ Willy Kurniawan - REUTERS

<パプア人への警察官の差別問題に端を発したデモや、公人への批判を取り締まる法案への反対運動など、政治不信が高まるインドネシアで、ジョコ・ウィドド大統領が再選後の新内閣を発足させた>

インドネシアのジョコ・ウィドド大統領は10月23日、首都ジャカルタの大統領官邸で第2期ジョコウィ内閣(2019年~2024年)の閣僚を発表した。

焦点となっていた大統領選を戦った対立候補の野党「グリンドラ党」のプラボウォ・スビアント党首(元軍幹部、スハルト元大統領の女婿)は国防相として閣僚入りし、同党は野党から与党に転換、ジョコ・ウィドド政権は国会で575議席中427議席を与党が占めるという圧倒的多数による安定政権となることが確実となった。

10月10月に暴漢に襲われて重傷を負ったウィラント調整相(政治・法務・治安担当)は再任されず、人権侵害の疑いで再任に反対していた人権団体や民主化組織の「要求」が通った形となった。しかし、国防相に任用されたプラボウォ氏は、ウィラント前調整相と同じく陸軍出身で同様に民主化運動活動家などへの弾圧に関与した疑いがあり人権侵害容疑が完全に払しょくされていないことから、人権団体などから強いは反発が出ることが予想されている。

さらに8月以来、差別問題などで騒乱状態が続いていたインドネシア東端のパプア地方の状況に関してジョコ・ウィドド大統領は大統領官邸にパプア人小学生を招いた席で「パプア人閣僚の登用したい」としていたものの、新閣僚にパプア人は含まれておらず「約束」が反故にされた形となっている。投資調整庁のバフリル・ラハダリア長官がマルク州出身ながらパプア州のファクファク育ちであることから、パプア人を「自称」しているが、彼をしてパプア人の入閣とするには無理があり、パプア人が「裏切り」と感じてさらに不満を高める懸念も出ている。

若手、経済専門家を多く起用

閣僚の顔ぶれをみると、オンライン配車・宅配サービス大手の「ゴジェック」社CEOだった35歳のナディム・マカリム氏(教育文化相)、ビジネスマンのエリック・トヒル氏(国有企業相)、NETテレビ創設者のウィヌスタマ氏(観光創造経済相)などの若手起業家や経済専門家の起用はジョコ・ウィドド大統領が事前に公言していた通りになり、一般の経済人と政党人の割合も55%と45%となり、これまでにないビジネス専門家内閣という性格も新しいものとなった。

政党別ではジョコ・ウィドド大統領の後ろ盾となっている最大与党「闘争民主党(PDIP)」から実質的に5人が入閣、与党「ゴルカル党」、「ナスデム」「国民覚醒党(PKB)」からそれぞれ3人、「統一開発党(PPP)」から1人が入閣した。

さらにプラボウォ党首率いる最大野党「グリンドラ」から党首以下2人が入閣を果たした。与党入りが噂されていた「民主党」からはゼロとなり、「国民正義党(PKS)」「国民信託党(PAN)」とともに野党にとどまることになった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復

ワールド

エプスタイン文書公開、クリントン元大統領の写真など
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 2
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 3
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 6
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 7
    おこめ券、なぜここまで評判悪い? 「利益誘導」「ム…
  • 8
    ゆっくりと傾いて、崩壊は一瞬...高さ35mの「自由の…
  • 9
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 10
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中