最新記事

中東

サウジ石油施設攻撃は「イラン南西部からドローンと巡航ミサイルで」

2019年9月18日(水)10時11分

サウジアラビア東部にある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が14日に受けた攻撃について、米政府当局者は17日、イラン南西部から攻撃が仕掛けられたという見解を示した。写真は14日、攻撃の様子とされる衛星画像。Planet Labs Inc提供(2019年 ロイター)

サウジアラビア東部にある国営石油会社サウジアラムコの石油施設2カ所が14日に受けた攻撃について、米政府当局者は17日、イラン南西部から攻撃が仕掛けられたという見解を示した。米国がこうした見方を示したことで中東の緊張が一段と高まる恐れがある。

3人の米政府当局者は匿名を条件に、攻撃には無人機(ドローン)と巡航ミサイルが使用されたと指摘。攻撃は当初考えられたより複雑で高度なものだった公算が大きい。当局者らは根拠となる証拠は示さなかった。

サウジ国営テレビは、国防省が18日に記者会見を開き、イラン製武器の使用など同国の関与を示す証拠を提示すると報じた。

この攻撃を巡っては、イエメンの親イラン武装組織フーシ派が無人機(ドローン)で攻撃したと犯行声明を発表。イランは関与を否定している。

イランと米国の関係は悪化しており、イラン国営テレビによると、最高指導者ハメネイ師は米国と二国間協議を行うことは決してないと表明。「いかなるレベルであれ、イラン当局者が米国と話すことは決してない。これはイランに圧力を加えるという(米国の)政策の一環だ。最大限の圧力政策は失敗する」と語った。ただ、米国が2015年のイラン核合意に復帰すれば、多国間協議を行う可能性はあると述べた。

トランプ米大統領もこの日、国連総会に出席する際にイランのロウハニ大統領と会談を行うことに前向きではないと述べた。

サウジ石油供給が復旧、原油価格下落

サウジのアブドルアジズ・エネルギー相はこの日の記者会見で、攻撃で停止した石油生産が月内に復旧し、生産能力は9月末までに日量1100万バレル、11月末までに同1200万バレルに達するとの見通しを表明。サウジは世界的な石油供給国としての確固たる役割を維持し、さらなる攻撃を防ぐために徹底的な措置を講じる必要があると述べた。

原油価格は前日は一時約20%上昇したがこの日は下落に転じ、北海ブレント先物はアブドルアジズ・エネルギー相の記者会見中に約7%下落。この日の清算値は4.47ドル(6.5%)安の1バレル=64.55ドルだった。

トランプ大統領はサウジに対する攻撃を受け、米国は対応に向け臨戦態勢が整っていると述べていたが、16日には対応は「急いでいない」とし、湾岸諸国のほか欧州諸国と対応を調整する姿勢を表明。米政府はこの日、ポンペオ国務長官をサウジに派遣した。

またトランプ大統領は必要に応じて米戦略石油備蓄を放出することを承認したと15日に明らかにしたが、この日は原油価格はそれほど大きく上昇していないとして、「備蓄放出の必要性はない」と述べた。

*内容を追加しました。

[ワシントン/ドバイ 17日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 英語で学ぶ国際ニュース超入門
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年5月6日/13日号(4月30日発売)は「英語で学ぶ 国際ニュース超入門」特集。トランプ2.0/関税大戦争/ウクライナ和平/中国・台湾有事/北朝鮮/韓国新大統領……etc.

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米雇用統計、4月予想上回る17.7万人増 失業率4

ワールド

ドイツ情報機関、極右政党AfDを「過激派」に指定

ビジネス

ユーロ圏CPI、4月はサービス上昇でコア加速 6月

ワールド

ガザ支援の民間船舶に無人機攻撃、NGOはイスラエル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 5
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 6
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 7
    ウクライナ戦争は終わらない──ロシアを動かす「100年…
  • 8
    目を「飛ばす特技」でギネス世界記録に...ウルグアイ…
  • 9
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新…
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 8
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が…
  • 9
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 10
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 9
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
  • 10
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中