最新記事

トラベル

本場スコットランドで味わう至高のスコッチ旅

Walking With Whisky

2019年9月6日(金)20時00分
ポーラ・フローリック(作家)

magw190906_whisky2.jpg

ブルックラディ蒸留所のサンプル採取 JEFF J MITCHELL/GETTY IMAGES

ブルックラディは1881年の創業だが、2000年にワイン業者のマーク・レイニエとサイモン・カフリンが買収した時点では、5年以上閉鎖されていた。

少量生産を維持したいと考えたレイニエとカフリンは、ビクトリア朝時代の歴史的な設備と倉庫を再整備。伝統の手作り生産にひとひねりを加えた。さまざまな種類の斬新な樽、特にワイン樽を使ってウイスキーを熟成したのだ(スコッチの熟成には通常、バーボンやシェリーの樽が使われる)。

この再建事業は大成功を収め、蒸留所は2012年に約7400万ドルでフランスの高級酒大手レミー・コアントローに売却された。買収後も少量生産を貫くという契約付きで──。

現在、ブルックラディは島で自治体に続く2番目の雇用主。泉の水や「土壌(ソイル)のゴッドファーザー」と呼ばれる地元農家ジェームス・ブラウンの大麦など、地元の産品を全て使う試みにも取り組んでいる。

ウイスキー・ウオークは、事前にウイスキーのことを少し勉強してから行くと、さらに楽しめる。私は蒸留所のアダム・ハナットにレクチャーを受けた。そこで学んだことは──。

ウイスキーの試飲はワインに似ているが、同じではない。テロワール(生育環境)、成分、果物や穀物をアルコールに変えるプロセス、味覚と香りといった類似点もあるが、ワインのテイスティングが口に含んで吐き出すのに対し、ウイスキーはそのまま飲み込むのだ。

スコッチは一気飲みや、何かと混ぜたり急いで飲むようにはできていない。ちびちびと口に入れたら、舌の上で風味が広がるのをゆっくりと味わう。そしてスムーズに喉を流れる、焼けるような感覚を楽しむのだ。

「最高のウイスキーはゆっくりと花開く。1秒置きに味覚が変わる」と、ハナットは言った。

そしてウイスキーはブランドごとに、たとえラベルが同じでも樽ごとに独自の風味がある。「アイラにはウイスキー作りの小さな生態系がいくつもある。全て手作業で、原料はほとんどがアイラ島のものなので、1回作るごとに違いが出る」と、ハナットは言った。

「ここの農家の大麦を使い、ここで蒸留して熟成し、ここでボトルに詰め、世界中に送る。私たちには、それが正しいことだという感覚がある」

私はその日、社名を冠した非ピート系の「ブルックラディ」と、ピートの香りが濃厚な「ポートシャーロット」を試してみた。どちらもフルーティーで、ほとんど桃のようだ。

magw190906_whisky4.jpg

「地元産」へのこだわり

そして世界で最も「ヘビー」なピート・ウイスキーと称する「オクトモア」は、予想よりも穏やかな味だった。口の中にピートのスモーク感が広がったが、喉にガツンとくるほどではない。これは......いける!

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロン氏、プーチン氏のイスラエル・イラン危機仲介

ワールド

原油先物続伸し3%超上昇、イラン・イスラエルの攻撃

ビジネス

ECB、2%のインフレ目標は達成可能─ラガルド総裁

ワールド

トランプ氏、イラン・イスラエル和平を楽観視 プーチ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中