最新記事

米移民問題

不法移民の子供たちを無期限に拘束するトランプ政権の非道

FLORES AGREEMENT CONTROVERSY

2019年8月30日(金)17時30分
ニコール・グッドカインド

メキシコ国境に近いテキサス州マッカレンの不法移民収容センターを出所し、バスを待つ人々 LOREN ELIOTT-REUTERS

<子供の拘束を20日間までとする「フローレス合意」を覆すトランプ政権の動きに民主党からの批判が高まるが>

米トランプ政権は不法移民の子供を保護しない方向に、また歩を進めた。不法移民の子供の拘束期間の制限を撤廃するのだ。

トランプ政権は不法移民を減らすため、中米などから難民認定を求めて不法入国した移民に刑事罰を問う「ゼロ・トレランス(不寛容)」政策を導入。子供を20日間を超えて不法移民収容施設に入れることはできないと定めた「フローレス合意」があるため、不法移民の親が拘束されると、子供は引き離される。トランプ政権の政策に批判的な人々は、乳児を含む子供たちを親から引き離すのは非人道的だと主張してきた。

2020年の米大統領選でトランプ陣営の幹部を務めるアンドルー・クラークは、これまで数々の民主党大統領候補が移民の家族をバラバラにするなと主張してきたとして彼らの発言を列挙したメールを発信した。新規則でお望みどおりになるという言い分だ。「家族が一緒にいられるようにすることが政府の最優先課題だと主張していたではないか」と、そのメールにはある。

しかし、民主党候補たちが賛同するわけがない。カマラ・ハリス上院議員は「拘束の長期化が、どうして国境の安全を確保し、越境暴力組織を制止するというのか」とツイート。エリザベス・ウォーレン上院議員も「フローレス合意で21日以上の拘束を禁じてきたのに、大勢の子供を危険にさらそうとしている」と、ツイッターで批判した。

外部の目が届かない不安

新規則は、連邦判事に承認されると60日以内に施行される。収容施設の条件に標準を設ける一方で、子供の拘束期間は20日までという期限は廃止する。移住希望者は審査手続き終了まで「家族居住型施設」に送られる。

申請手続きは90日以内で終わることが多いが、なかには何年もかかる場合もある。現在の審査待ちは約85万件、対応する判事は全米で450人を下回る。シラキュース大学の取引記録アクセス情報センターによると、審査開始までの待機期間は平均713日間だ。

人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのクララ・ロングによれば「トラウマ、自殺願望、医療態勢の不備による危険などを招く恐れがある。拘束すること自体が子供の安全を損なう。長期化は特に有害だ」。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、ウクライナ和平案の感謝祭前の合意に圧力 欧州は

ビジネス

FRB、近い将来の利下げなお可能 政策「やや引き締

ビジネス

ユーロ圏の成長は予想上回る、金利水準は適切=ECB

ワールド

米「ゴールデンドーム」計画、政府閉鎖などで大幅遅延
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    中国の新空母「福建」の力は如何ほどか? 空母3隻体制で世界の海洋秩序を塗り替えられる?
  • 3
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワイトカラー」は大量に人余り...変わる日本の職業選択
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    ロシアのウクライナ侵攻、「地球規模の被害」を生ん…
  • 7
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベー…
  • 8
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 9
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 10
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 6
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 7
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    「ゲームそのまま...」実写版『ゼルダの伝説』の撮影…
  • 10
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中