最新記事

台湾有事

中国に特攻できる自爆ドローンなど、加速する台湾の武器開発

Taiwan's New 'Suicide' Drone Can Hit Chinese Mainland Coastal Defenses

2019年8月19日(月)17時20分
ジェームズ・パターソン

中国人民解放軍の侵攻を想定した大規模軍事演習「漢光」(2019年5月)。緊急時には道路を滑走路代わりに使う Tyrone Siu-REUTERS

<中国の軍事的脅威が高まるなか、台湾は独自に最新兵器を開発、その一部を工業展で披露した。さらに、アメリカの兵器を大量購入しようとしている>

台湾は国内で開発した最新兵器として、中国沿海部に到達できる「特攻ドローン」の存在を明らかにした。「空飛ぶ剣」という意味の名前が付いたこのドローンは、台北世界貿易センターで8月15日~18日に開催された「台北航空宇宙産業防衛技術展2019」(TADTE)で初披露された。

設計者によれば、このドローンはレーダー信号を検出して追跡し、地上の基地やミサイル発射装置に突っ込み、爆発させる「特攻」攻撃を行う仕組みになっている。この展示会では、台湾で開発・製造されたその他80の軍事関連アイテムも紹介された。

台北航空宇宙産業防衛技術展2019(TADTE)の展示


中国による軍事的脅威の高まりは、この展示会の参加者全員が認識しているが、誰も口には出さない問題だ。共産主義の中国と民主主義の台湾の間の対立は、国共内戦で敗北した中華民国(国民党)の残党が49年に台湾に撤退して中華民国政府を打ち立てて以来、悪化の一途をたどっている。台湾は現在、アメリカと同盟関係にあり、アジアの経済国として成長している。

中国に対抗するために、台湾政府はアメリカに対してより多くの武器売却を要請している。米国務省は台湾の求めに応じ、100両を超えるエイブラムス戦車と地対空ミサイル「スティンガー」約250発、再利用可能なショルダーランチャーから発射できるミサイルなど総額22億ドルの武器供与を承認した。

また今月になってトランプ政権は、台湾へのF16戦闘機66機の売却を承認した。アメリカが台湾に戦闘機を売るのは27年ぶりだという。

中国は、台湾への武器売却に強く抗議しており、武器を製造する米企業に対して制裁を加えると警告している。

国防強化は今後も続く

アメリカの対台湾窓口機関である米国在台湾協会(AIT)のブレント・クリステンセン台北事務所所長はTADTE会場での演説で、この傾向は今後も続くと予想した。

「台湾によるこうした兵器開発への投資は評価に値するし、国防予算を年々引き上げ、自国を防衛するために必要な支出を十分に確保するという継続的な取り組みもすばらしい。そして国防関連費は、台湾が直面する脅威に比例して今後も増え続けると予想している」

展示会では台湾が開発した以下の兵器も紹介された。

装甲兵員輸送車「雲豹」装甲車M2 
中高度、長距離監視ドローンの最新モデル「騰雲」
地対空ミサイル「天弓3型」
超音速対艦ミサイル「雄風3型」 
台湾製の高度ジェット練習機の縮尺模型

(翻訳:栗原紀子)

20190827issue_cover200.jpg
※8月27日号(8月20日発売)は、「香港の出口」特集。終わりの見えないデモと警察の「暴力」――「中国軍介入」以外の結末はないのか。香港版天安門事件となる可能性から、武力鎮圧となったらその後に起こること、習近平直轄・武装警察部隊の正体まで。また、デモ隊は暴徒なのか英雄なのかを、デモ現場のルポから描きます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

インドネシア、340億ドルの対米投資・輸入合意へ 

ワールド

ベトナム、対米貿易協定「企業に希望と期待」 正式条

ビジネス

アングル:国内製造に挑む米企業、価格の壁で早くも挫

ワールド

英サービスPMI、6月改定は52.8 昨年8月以来
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    ワニに襲われた直後の「現場映像」に緊張走る...捜索隊が発見した「衝撃の痕跡」
  • 4
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた…
  • 5
    米軍が「米本土への前例なき脅威」と呼ぶ中国「ロケ…
  • 6
    吉野家がぶちあげた「ラーメンで世界一」は茨の道だ…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「22歳のド素人」がテロ対策トップに...アメリカが「…
  • 10
    熱中症対策の決定打が、どうして日本では普及しない…
  • 1
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で大爆発「沈みゆく姿」を捉えた映像が話題に
  • 2
    ワニに襲われた男性の「最期の姿」...捜索隊が捉えた発見の瞬間とは
  • 3
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門家が語る戦略爆撃機の「内側」と「実力」
  • 4
    突然ワニに襲われ、水中へ...男性が突いた「ワニの急…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    夜道を「ニワトリが歩いている?」近付いて撮影して…
  • 7
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 8
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 9
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 10
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 6
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 7
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 8
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中