最新記事

ヨーロッパ

ドイツの次期首相は、緑の党ハベックで決まり?

2019年7月20日(土)11時00分
ミヒャエル・ブレニング

ドイツ緑の党のハベック共同党首は人気政治家の仲間入りを果たした HANNIBAL HANSCHKEーREUTERS

<過激な環境政策を封印して中道派に転じた緑の党が世論調査でトップを走る>

ドイツの政党支持率の趨勢がこのまま続けば、21年秋の総選挙後の首相には緑の党の共同党首ロベルト・ハベックが就任するかもしれない。最近の世論調査で緑の党は政党支持率のトップを走っており、ハベックはすっかり人気政治家の仲間入りを果たしている。

緑の党が急速に支持を集めている理由はいくつもある。まず有権者が、キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社会民主党(SPD)の大連立に不満を募らせていることだ。

昨年12月にメルケル首相の後継としてCDU党首に就任したアンネグレート・クランプカレンバウアーは、保守派としての実績を必死にアピールしている。しかし最近の世論調査で、彼女を首相候補として適任とする有権者は13%にとどまった。

SPDをめぐる状況はさらによろしくない。5月の欧州議会選挙で惨敗し、現在は3人の暫定党首が率いている。大連立は近いうちに崩壊するだろうと、大半の有権者はみている。

そんな状況を追い風にしているのが、緑の党と、極右「ドイツのための選択肢(AfD)」。緑の党は80年に平和主義的な環境運動として結党したが、今は都市部のリベラルな中流層の支持を集める党に衣替えした。

党の新たな体制を築いたのは、共同党首のハベックとアンナレーナ・ベーアボック。昨年初めに党を率いるようになってから、2人は「過激な規制を訴える党」という従来のイメージを刷新した。例えば全企業の社員食堂にベジタリアンフードを導入するとか、燃料価格を3倍にするといった、いかにも緑の党らしい公約はおおむね撤回した。

連立を組む相手が問題

緑の党が中道派に転じる一方、同党が掲げていた脱原発や同性婚の合法化は今や政府が掲げる政策となった。さらには猛烈な熱波や、温暖化の脅威を訴える世界的な抗議運動の影響で、ドイツの有権者の大半は温暖化を重要な政治課題と見なしている。

加えて、ハベック本人も人気だ。10年ほど前に政界入りし、率直な物言いと持ち前のカリスマ性で「政治家らしくない政治家」というイメージを持たれている。哲学の博士号を持ち、小説や児童書を執筆し、詩集の翻訳も手掛ける。ドイツでは微妙なテーマである愛国主義を独自の形で唱えることで伝統的な左派とは一線を画しており、中道派の有権者からもさらに支持を集めそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、新興AI半導体開発グロックを200億

ワールド

北朝鮮の金総書記、24日に長距離ミサイルの試射を監

ワールド

米、ベネズエラ石油「封鎖」に当面注力 地上攻撃の可

ワールド

英仏日など、イスラエル非難の共同声明 新規入植地計
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 2
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足度100%の作品も、アジア作品が大躍進
  • 3
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...どこでも魚を養殖できる岡山理科大学の好適環境水
  • 4
    素粒子では「宇宙の根源」に迫れない...理論物理学者…
  • 5
    ジョンベネ・ラムジー殺害事件に新展開 父「これま…
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    ノルウェーの海岸で金属探知機が掘り当てた、1200年…
  • 8
    ゴキブリが大量発生、カニやロブスターが減少...観測…
  • 9
    「個人的な欲望」から誕生した大人気店の秘密...平野…
  • 10
    「時代劇を頼む」と言われた...岡田准一が語る、侍た…
  • 1
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 2
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低く、健康不安もあるのに働く高齢者たち
  • 3
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開したAI生成のクリスマス広告に批判殺到
  • 4
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 7
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 8
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 9
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 10
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 8
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中