最新記事

通商問題

米中貿易交渉、仕切り直しだが合意は「まずない」

US-China Trade Deal May Never Happen, White House Economist Warns

2019年7月11日(木)17時04分
カルヤン・クマル

6月29日、G20開催中の大阪で会談したトランプ米大統領と中国の習近平国家主席 Kevin Lamarque -REUTERS

<大阪での首脳会談では対話再開で合意したものの、具体的な争点は手つかずのまま>

通商交渉に携わる米中の政府高官が電話会談を行った翌日の7月10日、米国家経済会議(NEC)のラリー・カドロー委員長は、両国の間には解決が難しい争点がいくつもあり、合意にたどり着くことは「まずない」との見方を示した。

カドローはCNBCとのインタビューで、自分は楽観主義者であり、立場にどれほど隔たりがあろうとも中国と合意に至ることを期待していると語った。

ドナルド・トランプ米大統領も中国との合意を強く望んでおり、中国の習近平(シー・チンピン)国家主席も同じ立場だと考えているとも述べた。

貿易戦争に終止符を打つための交渉は5月、貿易慣行是正を確実にするための法整備などアメリカが重視する政策に中国が消極的だとして暗礁に乗り上げた。

中国は、法整備まで求めるのは内政干渉だと反発している。「わが国の(交渉)チームは再三再四、中国の法改正を求めていたから、反感がそこまで高まってしまった」とカドローは言う。「中国側は国家安全委員会もしくは政治局でも規制を導入できるし、それで十分だろうと考えていた。だがアメリカとしてはそれには同意できない」

中国はまた、米中間の合意を実施・監視するための枠組み作りからも手を引いた。

カドローは言う。「中国との交渉に合意期限はない。急いではいない。アメリカが求めているのは意味のある合意だ」

<参考記事>中国「開戦警告」発表:中国の本気度

ファーウェイへの締め付けは続く

カドローはまた、再開された交渉に弾みがつけば中国はアメリカ産農作物の輸入を増やすだろうと自信を見せた。

「大豆や小麦、それにエネルギー。いずれも非常に重要だ」とカドローは言う。

7月9日に大阪での米中首脳会談後初めてとなる電話会談を行ったのは、アメリカ側がロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)の代表とスティーブン・ムニューシン財務長官。中国側が劉鶴(リウ・ホー)副首相と鐘山(チョン・シャン)商業相だった。

ウィルバー・ロス米商務長官は中国の通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)と米企業の間の取引について、国家安全保障への脅威でない限り」認めるとのトランプ政権の立場を明らかにした。

一方でカドローは、米政府がファーウェイから部品やシステムを調達することはないと強調した。

<参考記事>Huawei一色に染まった中国メディア──創設者が語った本音

またカドローによれば米半導体メーカーは、韓国や台湾、ベトナムの企業からも購入可能な製品であればファーウェイへの販売が認められるという。

だが5G(第5世代移動通信システム)の分野では、米企業がファーウェイとの取引を認められることはないだろう。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

プーチン氏、南ア・印・ブラジル首脳と相次ぎ電話協議

ワールド

中欧向けロシア原油が輸送停止、ウクライナが輸送管攻

ワールド

トランプ氏「紛争止めるため、追及はせず」、ゼレンス

ワールド

中国首相、消費促進と住宅市場の安定を強調 経済成長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 3
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する現実とMetaのルカンらが示す6つの原則【note限定公開記事】
  • 4
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 5
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 6
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 7
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 8
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 9
    恐怖体験...飛行機内で隣の客から「ハラスメント」を…
  • 10
    あまりの猛暑に英国紳士も「スーツは自殺行為」...男…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 9
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 10
    【クイズ】アメリカで最も「盗まれた車種」が判明...…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中