最新記事

米政治

米独立記念日のトランプ演説は......意外と「まとも」だった

2019年7月8日(月)11時00分
ジョシュア・キーティング

CARLOS BARRIA-REUTERS

<戦車が展示され、戦闘機が飛ぶ。大統領が演説することすら異例だったが、蓋を開けてみると......>

認めるべきは認めよう。独立記念日の7月4日、ワシントンのリンカーン記念堂前で行われたトランプ米大統領の演説は意外に「まとも」だった。

「アメリカに敬意を」と銘打ったこの祝賀行事の演説は、トランプ自身の再選キャンペーンに言及することも、不法移民を非難することも、ジャーナリストを「人々の敵」と呼ぶこともなかった。民主党の指導部やリベラル派の芸能人を攻撃することもなかった。基準が低いと言われればそのとおりだが、これまでのトランプはこのレベルの自制も示さないことがあった。

そもそも現在の問題や争点にはほとんど触れなかった。霧雨の中で行われた演説の前半は、定型的な愛国の賛辞の連続。独立戦争、ロックンロール、ライト兄弟、スーパーボウルなど、「偉大なアメリカの物語」のなかでも比較的異論の少なそうな人物や出来事を取り上げていた。

次いでトランプは陸海空軍と海兵隊の4軍に敬意を表し、上空を米軍機が通過するのを待ってから(写真)、すぐに「宇宙軍」もできると付け加えた。

確かに独立記念日の式典は伝統的に「非政治的」なものとされ、大統領は演説しないのが通例だった。戦車も登場した軍事色の濃いイベントに対し、国の偉大さと強大な軍事力が混同されるという懸念の声も出ていた。だが演説自体は、無味乾燥だがおおむね害のないものだった。

とはいえ、この日がワシントンにとって奇妙な1日だったのは確かだ。ホワイトハウス前では、抗議のために国旗が燃やされた。有名な「赤ちゃんトランプ」の巨大風船が会場付近に持ち込まれ、チケットを持たない支持者を閉め出すためのバリケードまで登場した。

賛否が分かれたこの式典で分かったこと──それは、いずれにせよわれわれは同じアメリカ国民なのだ、ということだけだ。

©2019 The Slate Group

<2019年7月16日号掲載>

20190716issue_cover200.jpg
※7月16日号(7月9日発売)は、誰も知らない場所でひと味違う旅を楽しみたい――そんなあなたに贈る「とっておきの世界旅50選」特集。知られざるイタリアの名所から、エコで豪華なホテル、冒険の秘境旅、沈船ダイビング、NY書店めぐり、ゾウを愛でるツアー、おいしい市場マップまで。「外国人の東京パーフェクトガイド」も収録。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米総合PMI、12月は半年ぶりの低水準 新規受注が

ワールド

バンス副大統領、激戦州で政策アピール 中間選挙控え

ワールド

欧州評議会、ウクライナ損害賠償へ新組織 創設案に3

ビジネス

米雇用、11月予想上回る+6.4万人 失業率は4年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を変えた校長は「教員免許なし」県庁職員
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    「住民が消えた...」LA国際空港に隠された「幽霊都市…
  • 6
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 7
    【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労…
  • 8
    FRBパウエル議長が格差拡大に警鐘..米国で鮮明になる…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    「日本中が人手不足」のウソ...産業界が人口減少を乗…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 8
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 9
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 10
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中