最新記事

中国

対韓制裁、ほくそ笑む習近平

2019年7月7日(日)20時13分
遠藤誉(中国問題グローバル研究所所長)

特にサムスン電子やSKハイニックス、LGディスプレイといった大手が痛手を受ける。韓国では、まさか安倍政権がここまでのことをやるとは思っていなかったようで、どのメディアも一面トップで「衝撃」を表している。また時期が時期だけに、安倍政権は選挙目当てだという非難も目立つ。韓国政府はWTO違反だとして提訴すると抗議しているが、そのようなことをしている間に打撃が韓国の関連企業にしみわたっていくだろう。

ほぼ自業自得

打撃を受ける韓国企業の中に「サムスン」が入っている事実は、ある種の「痛快」を惹起させるのを否定できない。自業自得という言葉は上品でないかもしれないが、こういう日はもっと早く来るべきだったのではないかという、複雑な心理が頭をもたげる。

2018年12月24日付のコラム「日本の半導体はなぜ沈んでしまったのか?」でも触れたように、日本の半導体関係の技術者がリストラをひかえて窓際に追いやられていた頃、技術者の一部は「土日ソウル通い」をしていた。土日だけサムスンなどの半導体メーカーに通って破格の高給で東芝など自社の核心技術を売りまくっていたのだ。

本来なら宝物であるような「技術者」を大切にしなかった東芝などの日本の経営陣と当時の通産省の幹部に大きな責任があるものの、韓国の半導体メーカーは「日本の半導体技術を窃取した」と言っても過言ではない。

それは個別の韓国半導体メーカーだけの「狡猾さ」だけかというと、必ずしもそうではなく、韓国という国家全体にある、何とも表現しにくい「曖昧な狡さ」という精神性にあると私には見えてならないのである。

初めて明かす韓国の最高学府の「もう一つの顔」

私が自費で、中学生を対象とした日中韓三ヵ国の学力および意識調査をしたデータが、2000年の初頭に日本の国会で盛んに取り上げられたことがある。その重要性に目を付けた日本の内閣府が私に大学生を対象とした同様の調査を実施してもらえないかと委託してきたことがあった。

そのとき日本の大学として最高レベルの国立大学を3大学選定し、中国に関してもトップ3に相当する大学に協力をお願いして快諾を得た。

そこで韓国に行きソウル大学にお願いしたところ、なんと、協力を断ったのである。協力した大学に関しては名前を伏せるという約束をしていたので、協力してくれた大学名に関しては公表しないが、断った大学名に関して公表しないという約束はしていないから、ここで初めてこの秘密を明かすことにする。

断った理由をソウル大学は明確に言ったわけではないが、断る過程から十分な察しはついた。

つまり、自信がないのだ。

万一にも国際比較において「ソウル大学が日中の他の一流大学に劣る」という結果が出るのが怖いのである。

愛国心の欠片(かけら)もない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

マクロスコープ:政府の成長戦略会議、分科会でも積極

ワールド

タイとカンボジア、戦闘継続 トランプ氏との電話協議

ワールド

フィリピン中銀、0.25%利下げ 予想通り

ビジネス

日経平均は続落、FOMC通過で出尽くし ソフトバン
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 2
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡大、そもそもの「停戦合意」の効果にも疑問符
  • 3
    「何これ」「気持ち悪い」ソファの下で繁殖する「謎の物体」の姿にSNS震撼...驚くべき「正体」とは?
  • 4
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 5
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキン…
  • 6
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 7
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 8
    「正直すぎる」「私もそうだった...」初めて牡蠣を食…
  • 9
    「安全装置は全て破壊されていた...」監視役を失った…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 9
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中