最新記事

台湾

台湾親中派の影に中国共産党「工作部」 事業支援で再統一の機運上昇狙う

2019年7月5日(金)11時54分

台湾のビジネスマンであるJhang Yun-nanさんは、自社製の新しい洗剤を中国に売り込むため、従来とは異なるツテに頼った。台湾と中国の統合を主張する、台湾の政党だ。写真は中華統一促進党(CUPP)幹部のLin Guo-cing氏(2019年 ロイター/Ann Wang)

台湾のビジネスマンであるJhang Yun-nanさんは、自社製の新しい洗剤を中国に売り込むため、従来とは異なるツテに頼った。台湾と中国の統合を主張する、台湾の政党だ。

中華統一促進党(CUPP)のある幹部は、Jhangさんの会社の中国法人のために広東省の市場規制庁の当局者に「口をきく」ことができると言う。ただし、条件が1つある。

この党幹部Lin Guo-cing氏は、ロイター記者が同席した場で、広東省の多くの当局者との人脈を誇示しつつ、Jhangさんに対し中国でのビジネスのためには「正しいイデオロギー」が必要だと説いた。

Lin氏はロイターに対し、「海峡を越えて、中台が平和的に統一されることを支持する」と述べた。CUPPは、同党が支援する台湾人にも同様の考えを支持することを期待している。

中国は台湾を不従順な1つの省と見なし、必要とあらば実力行使により中央政府の統制に従わせるべきだと考えている。現在の台湾政府は、1949年に中国共産党との内戦に敗れ台湾島に逃れた国民党が樹立したものだ。

中国政府は「再統一」を促進するため、台湾における協力者のネットワークを開拓しており、この目標を支持することを条件に有利なビジネス機会を提示して台湾人を惹きつけようとするキャンペーンを強化している。

彼らが重要なポイントの1つと考えているのが、Jhangさんのようなビジネスマンを「中国市場へのアクセスその他の支援を得るためなら、再統一というスタンスを受け入れることは小さな代償である」と説得することだ。

もう1つは、親中派のネットワークを利用して、中国本土に対する共感と支援を育むことである。CUPPの政策顧問を務めるWen Lung氏によれば、同党は党の「赤軍」の勢力拡大に向けて台湾でセミナーや集会を開催することを計画しているという。

台湾政府は、こうした取組みは危険ではあるが、違法ではないと述べている。

台湾の大陸委員会の副主任委員を務める邱垂正氏はロイターの取材に対し、「安全保障体制を強化するには、法律を強化するしかない」と語った。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米共和党対中強硬派、華為への販売全面阻止を要求 イ

ビジネス

世界のワイン需要、27年ぶり低水準 価格高騰で

ワールド

米国務省のアラビア語報道官が辞任、ガザ政策に反対

ワールド

欧州委、ロシア産LNGの制裁検討 禁輸には踏み込ま
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    今だからこそ観るべき? インバウンドで増えるK-POP…

  • 5

    未婚中高年男性の死亡率は、既婚男性の2.8倍も高い

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 4

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 5

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 6

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこ…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中