最新記事

香港

香港デモ、体制に対する暴力の行き着く先

What Happens Now After 50 Injured In Hong Kong Protests?

2019年7月3日(水)19時03分
ジェイソン・レモン

政府の建物に侵入したテモ隊の一部は、ガラスを割り、落書きをした。その様子はソーシャルメディアで拡散された。夜遅く、警察は占拠された立法会の建物を囲み、デモ隊を排除した。だが抗議行動は建物の外や市全体で続いた。

香港政府と警察は暴力に訴えた抗議者たちを厳しく批判したが、反政府派の議員とデモを率いた人々はそれに反発、林鄭の政権が「若者たちを絶望に向かわせた」と非難した。

「これほど頭にくることはない。われわれの要求を林鄭は拒絶した。これで、『耳を傾けるつもりがある』と言う彼女の言葉は最悪の政治的な嘘だということがはっきりした」という反対派の言い分をサウスチャイナ・モーニングポストは掲載した。「6月9日以来彼女の返答は彼女の傲慢さを浮き彫りにし、火に油を注いだ。それが今の危機につながった。悪いのは林鄭だ」

しかし、地政学的な未来予測をするゲオポリティカル・フューチャーズの分析部門を率いるジェイコブ・シャピロは改正案の審議無期限延期で、反対派は前に進むのが難しくなったと本誌に語った。

「今回のような破壊活動は、数千人規模とはいっても、全体に比べるとはるかに小さなグループの仕業だ。自分たちの過激な意見を通すためにある程度の暴力は容認しているグループだ」と、彼は言う。「一般の香港住民で同調する人はそれほどいないと思うが、どうなるかはまだわからない」

過剰な反応は危険

彼はまた、破壊行為に走った抗議者たちは「みずからの大義を非合法なものにしてしまった」と主張する。

抗議者たちはまた、問題の改正案の完全撤回か、少なくとも廃案を求めた。だが香港で行われた2日早朝の記者会見で、林鄭は将来にわたって廃案にするというところまで言明しなかった。

「香港政府の今の目標は事態をコントロールし続けることのはず。だから混乱が起きても過剰に反応して抗議者たちを刺激したりしないことだ」と、シャピロは言う。彼は、デモ隊を力で弾圧することを中国が支持するとは思わないという。

「政府の取り締まりが厳しくなりすぎると、ほんの数千人の若者の怒りだけではなく、住民が一斉に立ち上がるかもしれない」

(翻訳:栗原紀子)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ノーベル平和賞マチャド氏、授賞式間に合わず 「自由

ワールド

ベネズエラ沖の麻薬船攻撃、米国民の約半数が反対=世

ワールド

韓国大統領、宗教団体と政治家の関係巡り調査指示

ビジネス

エアバス、受注数で6年ぶりボーイング下回る可能性=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア空軍の専門家。NATO軍のプロフェッショナルな対応と大違い
  • 3
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 4
    トランプの面目丸つぶれ...タイ・カンボジアで戦線拡…
  • 5
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 6
    死者は900人超、被災者は数百万人...アジア各地を襲…
  • 7
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 8
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 9
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 10
    イギリスは「監視」、日本は「記録」...防犯カメラの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中