最新記事

香港

香港デモ、体制に対する暴力の行き着く先

What Happens Now After 50 Injured In Hong Kong Protests?

2019年7月3日(水)19時03分
ジェイソン・レモン

7月1日にデモ隊の一部は香港の立法会(議会)の建物になだれこみ、議場を占拠した。Thomas Peter- REUTERS

<中国への身柄引き渡しを恐れる香港のデモは日々拡大し、ついに一部が議会の建物を占拠、50人以上が負傷する事態になった。これで抗議者側は不利になるのか?>

7月1日夜から2日朝にかけて、香港では再び大規模なデモが起きた。一部の若いデモ参加者が立法会(議会)の建物になだれ込み、しばらく占拠した。最終的に50人以上が負傷し、治療を受けた。

逃亡犯引き渡し条例の改正案に反対するデモの一部が今回、暴力的なものに転じたことは、抗議する側にとって有害無益だったかもしれない、とある専門家は本誌に語った。

香港紙サウスチャイナ・モーニングポストによると、香港病院当局は、抗議行動による負傷で少なくとも54人(現在重体の3人を含む)を治療したと報告した。デモ参加者が鎮圧にあたった警官隊に謎の液体をかけたため、警察官も少なくとも13人が負傷したという。

香港政府は4月、刑事事件の容疑者を中国本土へ引き渡すことを可能にする「逃亡犯条例改正案」を議会に提出した。香港は現在、中国本土、台湾、マカオとは犯罪人引渡条例を結んでいない。民主化を求めるデモ隊は、この改正案に対して数週間前から抗議活動を続けてきた。

平和的な抗議は効果なし

政府が改正案を提出する直接のきっかけとなったのは、香港在住の男性が台湾で女性を殺害した事件。香港政府の最高経営責任者である林鄭月娥(リンチョン・ユェオー)行政長官は、改正案は香港に逃げ帰った容疑者を台湾に引き渡し、正義を行うことを目的としていると主張した。

だが、抗議者たちは政治的な理由による香港市民の中国本土への移送に利用されるのではないかと懸念している。容疑者の身柄引き渡しを要求している台湾も、香港政府による条例改正に基づく引き渡しを求めるつもりはない、という立場だ。

林鄭は6月にこの改正案の審議を無期限延期したが、完全な撤回を求める反対派の声には応じなかった。現在の状況下では、政府は後日、法改正の審議を再開することができる。

「これでうまくいくかどうかはわからない。でも私たちの意見を林鄭に届けるために他にどんなやり方があるというのか」と、立法会の建物の外で抗議活動に参加していたある男性は、英ガーディアン紙に語った。「以前は平和的に抗議していたが、効果がなかった。今はこれまでの枠組みから抜け出して、答えが得られるまでどんなこともやってみるつもりだ。政府にもそれを思い知らせなくては」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ブラザーが価値向上策示せば、TOBに応じる可能性=

ビジネス

インテル、ASML次世代半導体装置を組み立て 世界

ビジネス

独経済、第1四半期はプラス成長の公算 回復兆候とは

ビジネス

ブルガリアのユーロ導入、数カ月後ずれも=中銀総裁
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の衝撃...米女優の過激衣装に「冗談でもあり得ない」と怒りの声

  • 3

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 4

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 5

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 6

    「イスラエルに300発撃って戦果はほぼゼロ」をイラン…

  • 7

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 8

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 9

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 10

    紅麴サプリ問題を「規制緩和」のせいにする大間違い.…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体は

  • 4

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 5

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 8

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 9

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 10

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中