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中東

シリアの核施設を空爆で破壊せよ

Taking Out Syria’s Nuclear Potential

2019年6月28日(金)15時40分
ヤーコブ・カッツ(エルサレム・ポスト紙編集主幹)

ヘブライ語で「ボア(穴)」と呼ばれるIDFの地下司令室では喝采が起きたが、シュケディはまだ緊張を解くわけにはいかなかった。パイロットとの最終ブリーフィングで、シリア戦闘機と直接対峙してはならないと指示していた。シリア機が撃墜されたらアサドは「否認モード」に引きこもって見て見ぬふりをするわけにはいかなくなる。

作戦自体がなかったかのように見せ掛ける必要があった。戦闘機は一気に加速してデリゾールを後にした。午前2時、作戦開始から4時間弱で全機がそれぞれの基地に戻った。

「否認モード」に賭けて

「穴」に緊張感が漂った。だがヤドリンは部下たちの読みどおり、アサドは「否認モード」に引きこもるはずだと考えていた。アサドは長年そうしてきたように、今回もイスラエル機の領空侵入に見て見ぬふりをするだろう。戦争に踏み切るには、9月6日の謎の空爆に対して、イスラエルと戦争を始める理由を国民に説明しなければならない。1973年の第4次中東戦争以来最大の戦争に、だ。

経済が破綻しかけているのに、なぜ負け戦に国を引きずり込むのか、国民はいぶかるだろう。アサドがひそかに原子炉を建設していたと知ったら、国民が食べるものにも困っているのに原子炉に無駄金を使うとは何事か、と猛反発する恐れもあった。

一方、分裂し不満を抱く国民を結束させるには戦争が一番だということも、アマンの分析官たちは知っていた。アサドが報復を決断した場合、国民を納得させる口実はある。「軍事力を増強してシリアを超大国にしようとした」が、シオニストがその可能性を奪った。だから戦争に踏み切った――と言えばいい。

だが実際にはアサドの側近数人を除いて、シリア政府内で原子炉の存在を知っていた者は皆無に等しかった。IDFの北部軍が有事の際は援軍到着まで前線で持ちこたえるべくシリアとの国境付近で待機した。

空爆に加わったパイロットたちは離陸前、着陸して燃料を補給し再び離陸する可能性もあると聞かされていた。アサドが最終的にどう出るか、誰にも分からなかった。

IDFはさまざまなシナリオに備えた。オルメルトは空爆直後にアサドに内々にメッセージを送ることも考えた。イスラエルは原子炉を破壊したが作戦はそれだけだ、「そちらがおとなしくしていれば、こちらも何もしない」と知らせるためだ。

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