最新記事

ペット

犬連れ参拝客に人気の神社が「ペット連れ禁止」の苦渋の決断

2019年6月24日(月)17時30分
内村コースケ

参拝客の複雑な思い

oinu.jpg

境内に鎮座する「お犬さま」たち

正式に禁止になる7月に入る前に参拝しておこうという人は他にも多いようで、この日は平日にも関わらず、既に駐車場周辺に多くの犬連れ客がいた。

「入れなくなるというので、去年に続いて家族で来ました。参拝してからすごくいいことが続いたので、お礼参りを兼ねて。それだけに犬と一緒に来られなくなるのはかなりショックです」と語るのは、家族4人で神奈川県から来た女性。愛犬のトイ・プードルには、前回同様マナーベルト(犬のおむつ)をつけてきた。今後再訪する場合は、家族内で犬と一緒に境内の外で待つ組と参拝する組に分かれて、交代で参拝するようにしたいとのことだ。

犬を飼っているが、あえて連れてこなかったという人にも出会った。大型犬のラブラドール・レトリーバーと暮らすさいたま市から来た45歳の男性は、「そういえば、(神社などに)一緒に来たいと思ったことはなかったですね。確かにこの場に一緒に犬がいればかわいいと思うし、犬も散歩の延長で楽しいかもしれませんが・・・。うちは大きいから特になんですけど、混んでいたりすると周りの人に迷惑をかけてしまうのは嫌ですね。(犬が)怖いという人もいるじゃないですか。もともとそういう感じなので、ペット禁止には賛成でも反対でもないですが、やっぱりマナーを守れない人は連れてきてはいけないと思います」と話していた。

他にも何組か犬連れの人と言葉を交わす機会があったが、いずれもペット禁止措置を報道などで知り、7月1日を迎える前に、名残惜しみつつ来たという飼い主だった。そのうちの一人の地元の老婦人は、「昔は、境内で犬を見ることはなかったと思うよ。(参拝客が犬を連れてくるようになったのは)最近になって飼う人が増えてからじゃないですか?ワンちゃんを留守番させるわけにもいかない人も多いしね」と話す。

戌(いぬ)年だった昨年は、「お犬さま」の三峯神社は多くのメディアに取り上げられた。パワースポットブームもあって、参拝客の絶対数が近年増加傾向にあったのは間違いなさそうだ。犬連れ客のマナーの問題も、それに伴い黙認できる範囲を超えたのであろう。

皆が気持ちよく参道を歩くために

MJ011.jpg

他の犬とすれ違う際には、自分の犬を待機させて不測の事態を回避する配慮も必要

1時間ほど遅れて犬のしつけのインストラクターの川原さんが到着。僕らも、川原さんの愛犬のベルジアン・シェパード・ドッグ・タービュレン『ヒューゴ』、藤岡さんとグローネンダールの『風蓮』と "最後の犬連れ参拝"に向かった。川原さんは、子供の頃に南アフリカやペット先進国と言われるドイツ(旧東ドイツ)で犬を飼い、近年もアメリカ在住経験がある国際派のインストラクターだ。僕は、そんな犬連れ旅のエキスパートでしつけのプロでもある川原さんが、どういうふうに参道を歩き、参拝するのか注目した。

犬の鳴き声などに配慮が必要な場所では、犬同士がすれ違う際には特に注意が必要だ。「前から犬が来た時は、様子を見て、吠えてきたりしそうな犬だったら、立ち止まって自分が通路の真ん中側になるように(真横に犬を)待機させて、『お先にどうぞ』という形で道を譲ります。相手の動きが止まっていて目線が飼い主に行っていれば(犬を見て興奮するような犬でも)お互いが落ち着きやすいからです」と川原さん。「あっちが吠えるから悪いのよ、ではなく、たとえ自分の犬がよくしつけられていたとしても、皆が気持ちよく歩けるように、相手が吠えるような状況を作らないのもマナーだと思います」

また、川原さんたちは、それぞれの犬を鳥居や門の前に座らせ、記念撮影をした。「真ん中で正面から撮りたいところではありますが、周囲に誰もいないような状況でない限りは、他の参拝客の妨げにならないよう、ちょっと端に寄って斜めから撮るくらいで妥協します」

MJ005.jpg

他の参拝客の邪魔にならない配慮も必要。記念撮影は少し端に寄って

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード

ワールド

ウクライナ、国外在住男性のパスポート申請制限 兵員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中