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ファーウェイ、一夜にして独自OS:グーグルは米政府に包囲網解除を要求か

2019年6月11日(火)18時45分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

それもそのはず。

グーグルは既にファーウェイがOSを独自開発していることを知っていたのだろう。そして任氏とは「話ができていた」としか思えない。

ネットには

●青ざめるグーグル
●グーグルは慌てたのか?
●グーグルはファーウェイに寝返ったのか?

など、さまざまなショッキングな言葉が溢れているが、要はグーグルは米政府(商務省)に「トランプ政権によるファーウェイへの攻撃包囲網を解除するように求めた」というのである。

理由は、「米政府はファーウェイに安全上の問題があると言うが、しかしオープンソースを用いてアンドロイドに類似したOSをファーウェイが作れば、かえって米政府の安全を脅かす危険性がある」とのこと。なぜなら、AOSP(Android Open Source Project)として公開されると、オープンソース・ソフトウェア・ライセンスが適用され、自由に閲覧もしくは再利用できるようなルールになっている(らしい)。だからファーウェイに、それはルール違反だと言えなくなってしまう(らしい)。

グーグルは自由に改良できるLinuxをもとに作っているため、スマホなどを開発するメーカーによって積極的にカスタマイズされて発売されている。だから大丈夫なのだろう。素人目には、知財権に関して大丈夫なのかと思ってしまうが、グーグルもそういった批判は発表しておらず、むしろバグ(プログラム上の欠陥)が発生して安全が保証できないスマホが蔓延するので、ファーウェイ包囲網は、かえって米国に安全上のリスクをもたらすという論理で、グーグルは米政府に抗議している。

しかし、これは「ファーウェイにしてやられた」ということではなく、最初から仕組まれていたのではないかと、筆者には映る。

シリコンバレー精神か?

なぜなら、かつて『ネット大国中国 言論を巡る攻防』(2011年、岩波新書)でグーグルの中国撤退に関するプロセスをつぶさに追いかけたことがあるが、グーグルには常に「良心」がある。だからこそ中国政府の言論弾圧と統制に抗して、グーグルは中国市場を撤退したのだ。そのとき多くの中国の若者は民主を求めてグーグルとの別れを涙で惜しんだものだ。

グーグルの理念「邪悪になるな」(Don't be evil)に関しては、最近では3月25日付のコラム<グーグルよ、「邪悪」になれるのか?――米中AI武器利用の狭間で>でも触れたが、そのグーグルの魂は彷徨い続けているようにも見える。

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