最新記事

米中関係

ファーウェイたたきはトランプの大博打

Huawei, China, and a Trade War

2019年5月21日(火)16時00分
シャノン・ティエジー

貴州省の貴安新区に建設中のファーウェイの巨大データセンター WU DONGJUNーVCG/GETTY IMAGES

<中国が世界に誇るIT企業ファーウェイの息の根を止めかねない強硬措置で、膠着状態に陥った貿易交渉は打開されるのか>

米中貿易交渉が膠着状態に陥り、再開の見通しが立たないなか、アメリカが新たなパンチを繰り出した。それも強烈なダブルパンチだ。

ドナルド・トランプ米大統領は5月15日、国家安全保障上のリスクがあると見なされたIT企業の調達を禁止する大統領令を発表した。「国外の敵が所有し、支配し、またはその管轄または指揮下にある者が設計、開発、製造、または供給する情報通信技術またはサービス」の使用を禁止するというのだ。

誰が「国外の敵」に当たるか、そしてどのような取引が安全保障上のリスクに当たるのかは、商務長官が他の閣僚と相談して下すという。この大統領令は「中国」はもとより特定の国名に言及していない。しかしその念頭には、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)や中興通訊(ZTE)といった中国のIT企業が、中国政府に盗聴目的などで利用されることへの懸念があるとみられている。

その懸念を確認するかのように、米商務省も同日、ファーウェイとその関連企業を産業安全保障局(BIS)の「エンティティー・リスト」に加えると発表した。このリストに加えられるのは、アメリカの安全保障や外交政策上の利益に反する活動に関与していると見なされた人や組織。そのような人や組織にアメリカの技術を売却または移転する場合は、BISの許可を得なければならない。

すぐに中国は反論した。外務省の陸慷(ルー・カン)報道局長は16日、「『国家安全保障』という、どうにでも解釈可能な言い回しで、輸出規制を乱用している」と非難。米政府は「その間違った慣行をやめる」べきだと呼び掛け、「中国は中国企業の正当な権益を守るため必要な措置を取る」と警告した。

トランプの大統領令と、ファーウェイのエンティティー・リスト入りは、名目的には米中貿易戦争とは無関係の措置を装っているが、このタイミングといい、ターゲットといい、無関係と考えるのには無理がある。

ZTE式の解決はない?

2つの措置が発表されたのは、米中貿易交渉が膠着状態に陥り、トランプが中国製品2000億ドル分への追加関税に言及した10日後のこと。米通商代表部(USTR)が、追加関税の対象品目を示した3日後だった。

一方、中国政府は13日、米製品600億ドル分に対する最大25%の追加関税を発表した。さらに中国政府は、中国で事業活動を行う米企業を標的に、もっと非公式な形で、もっと大きなダメージを与える報復措置を取るのではないかと懸念されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

中国万科、債権者が社債償還延期を拒否 デフォルトリ

ワールド

トランプ氏、経済政策が中間選挙勝利につながるか確信

ビジネス

雇用統計やCPIに注目、年末控えボラティリティー上

ワールド

米ブラウン大学で銃撃、2人死亡・9人負傷 容疑者逃
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 2
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    南京事件を描いた映画「南京写真館」を皮肉るスラン…
  • 5
    極限の筋力をつくる2つの技術とは?...真の力は「前…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 8
    大成功の東京デフリンピックが、日本人をこう変えた
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 9
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 10
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中