最新記事

台湾

トランプ大統領と会談した郭台銘・次期台湾総統候補の狙い

2019年5月6日(月)12時30分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

2020年の台湾総統選挙に出馬表明をした 鴻海(ホンハイ)の郭台銘会長 Tyrone Siu-REUTERS

5月1日、ホンハイの郭台銘会長はホワイトハウスでトランプ大統領と会談した。会談中、郭氏は米国国旗と、北京が認めない「中華民国」の国旗を付けた青い帽子をかぶっていた。その狙いは何か?米中台のゆくえを追う。

中華民国とアメリカの国旗を付けた帽子の意味

世界最大のハイテク製品受託生産企業である台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業(以下、ホンハイ)の郭台銘(かく・たいめい。Guo-TaiMing)会長が、5月1日、トランプ大統領と会談した。

彼はホワイトハウスに入る際に、青い地色に「中華民国」の国旗とアメリカの国旗をあしらった野球帽をかぶっていた(RFI報道。郭氏が手にしているのは後述するトランプ大統領サイン入りのコースターと、そのコースターにサインしたペン)。

郭氏は4月17日に、国民党から来年の総統選に立候補すると宣言している。

一方、「中華民国」という国家が存在することを中国(中華人民共和国)は認めていない。

1971年7月9日、ニクソン政権時代のキッシンジャー(元)国務長官が忍者外交により訪中し、「一つの中国」を取り付けてから、中国は「中華人民共和国を唯一の中国を代表する国家」と認めさせた上で、同年の10月25日に国連に加盟した。この日、アメリカの裏切りに激怒した「中華民国」代表の蒋介石総統は国連を脱退。

かくして中国、中華人民共和国=北京政府の天下となったのである。

アメリカのお墨付きを手にした中国は一気呵成に「一つの中国」を旗印として、世界中の多くの国と「一つの中国」を条件に国交を結び、絶対に「中華民国」という「国家」の存在を認めさせていない。

その中国の習近平国家主席や李克強首相とも仲睦まじい郭氏は、親中的傾向が強すぎるとして台湾での人気が今一つだ。

そこで、頭に禁断の「中華民国」の国旗「青天白日満地紅旗」を掲げ、それをアメリカ国旗と並べることによって、「親中ではなく、親米であり、アメリカと仲良くやっていくのだ」ということを台湾国民およびアメリカにアピールしようとしたものと解釈できる。

上述のフランスのRFI報道を始めとした多くの中文メディアによると、トランプ大統領との会見後、郭氏は以下のように記者団に語っている。

●トランプ大統領との会談の間、私は最初から最後まで、「中華民国」の国旗を付けたこの帽子をかぶっていた。それによって「中華民国」の存在と尊厳をアピールした。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚

ワールド

26年ブラジル大統領選、ボルソナロ氏長男が「出馬へ

ワールド

中国軍機、空自戦闘機にレーダー照射 太平洋上で空母

ビジネス

アングル:AI導入でも揺らがぬ仕事を、学位より配管
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 9
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 10
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中