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「一帯一路 国際シンクタンク」結成を提唱:「新国連」を立ち上げる勢い

2019年4月27日(土)22時41分
遠藤誉(筑波大学名誉教授、理学博士)

二階氏はこのインタビューで、一帯一路に関する「第三国市場での協力」が如何に有意義であるかを強調し、「昨年10月に安倍首相が訪中した時には、日中両国の官民の関係者が数多く一堂に集まり(日本側民間企業関係者は500人規模)、数多くの協力意向書(覚書)に署名した」と語っている。「重要なのは、これらの日中協力が国際規範に合致するだけでなく第三国の利益にも適っていることで、われわれはこの観点を基本軸として日中企業協力を具体的に推進していきたい」と強調した。

中国が「一帯一路」に関して日本に期待している役割は、まさに二階氏が語ったところの「日中協力が国際規範に合致するだけでなく第三国の利益にも適っている」ことを全世界に知らせることなのである。

その証拠に新華網のこの単独インタビューは中国政府のシンクタンク中国社会科学院の学術的なウェブサイトにも転載され、さらに庶民が読む「百家号」などにも転載されて全中国のネットを網羅し、英語に翻訳されて全世界に大きな影響をもたらす結果を生んでいる。

日本は政権与党の自民党が、自ら好んで中国がアメリカを凌駕する地位にまで登りつめるために、中国の勢いを加速すべく手を貸しているのである。

まるで国連に取って代わる勢い

同じく4月25日付の「日本が提唱する第三国モデル(新模式)」を強調する新華網情報によれば、現時点では126ヵ国と29の国際組織が「一帯一路」の協力文書(中国語:合作文件、日本語:覚書)に署名し、「一帯一路」の理念と主張は、国連やG20、APECおよび上海協力組織など、重要な国際組織に書きいれられているとのこと。

国連の加盟国は2017年10月現在で193ヵ国である。加盟国の数からみても、国連加盟国に迫る勢いである。

4月24日の中国共産党系の新聞「参考消息」の情報によれば、「一帯一路」とペアで動いているAIIB(アジアインフラ投資銀行)の参加国は、現時点で97ヵ国に及んでいるという。AIIBに参加していないG7は日本とアメリカ、カナダだけで、中国はイギリスを最初に陥落させることによってG7を切り崩している。一帯一路には3月末イタリアが覚書に署名してG7が崩れ始めている。

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