最新記事

事故

ボーイング737MAXはなぜ墜落したのか? エチオピア政府報告書を検証

2019年4月9日(火)11時04分

●有効な対応なのか

専門家は、ライオン航空機事故の後に出されたガイドラインが、シミュレーターではなく、離陸直後の高度が低い状態で起きた現実の緊急事態を操縦士が切り抜ける上で十分だったか疑問視している。

ある737MAXの操縦士は、操縦かんの抵抗は通常の4倍程度になり、スイッチを解除した時の機体の姿勢次第では、機首を適切な位置に戻すまでに数十回も手動で操縦かんを回さなければならないこともあると話す。

暫定報告書は、操縦士2人が一緒に操縦かんを回したが、機首はほとんど上げられなかったとしている。

「乗組員は、電動トリムを再起動させたようだ」と、元ボーイングのエンジニア、ピーター・レム氏は言う。「だが、ほんのわずかしか機首を上げられなかった。直ちに水平尾翼(スタビライザー)を再び調整しようとしたのではないか。最後のMCASのコマンドは、最後の手動トリムコマンドの5秒後だった」

●なぜ手動で機首を上げられなかったのか

MCASで緊急事態が起きた場合の適切な対応は、機首が下がった危険な状態を電動スイッチを使って修正し、その後にMCASを解除して操縦かんで手動でトリムを取ることだと、航空業界のコンサルティング会社リーハムのアナリストBjorn Fehrm氏は言う。

だが、速度が速すぎる場合、電動スイッチが効かない可能性があると、欧州の航空当局が2016年のメモで指摘している。そして、MCASを解除する前に完全にトリムを修正できていない場合は、パイロットが機体をコントロールするのが物理的に不可能になる可能性があると、Fehrm氏は言う。

通常の環境では、トリムは機体を水平に飛行させるために使われる。

時速250ノット(約460キロ)までなら、操縦士は操縦かんで手動でトリムを安定させることが可能だ。だが速度が300ノットかそれ以上に上がると、動かそうとしている機体の部分への風圧が強すぎて、操縦かんを回せなくなると、Fehrm氏は指摘する。

操縦士が2人がかりで操縦かんを動かせなくなっていた時点で、エチオピア航空機の速度は最大巡航速度の340ノットを上回っており、警報音が鳴り響いていた。墜落直前の速度は500ノットに達していた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

エヌビディア、AIインフラのコアウィーブに20億ド

ワールド

イタリア、イラン革命防衛隊のテロ組織認定をEUに提

ワールド

米当局、ミラノ五輪でのドローンによる妨害行為対策準

ワールド

トランプ氏、貿易協定巡り韓国国会非難 自動車関税な
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市 vs 中国
特集:高市 vs 中国
2026年2月 3日号(1/27発売)

台湾発言に手を緩めない習近平と静観のトランプ。激動の東アジアを生き抜く日本の戦略とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 3
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 4
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 5
    「外国人価格」で日本社会が失うもの──インバウンド…
  • 6
    「20代は5.6万円のオートロック、今は木造3.95万円」…
  • 7
    中国、軍高官2人を重大な規律違反などで調査...人民…
  • 8
    私たちの体は「食べたもの」でできている...誰もが必…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 1
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」と「フリース」に移った日
  • 2
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡張に新たな対抗手段
  • 3
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コングスベルグ社のNSMにも似ているが...
  • 4
    データが示す、中国の「絶望的な」人口動態...現実味…
  • 5
    ラブロフ、グリーンランドは‌デンマーク​の「自然な…
  • 6
    【銘柄】「古河機械金属」の株価が上昇中...中国のレ…
  • 7
    ニュージーランドの深海に棲む、300年以上生きている…
  • 8
    完全に「ホクロ」かと...医師も見逃した「皮膚がん」…
  • 9
    40代からは「積立の考え方」を変えるべき理由──資産…
  • 10
    麻薬中毒が「アメリカ文化」...グリーンランド人が投…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 7
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 8
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 9
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中