最新記事

事故

ボーイング737MAXはなぜ墜落したのか? エチオピア政府報告書を検証

2019年4月9日(火)11時04分

エチオピア政府は、アディスアベバ近郊で先月起きたエチオピア航空のボーイング737MAX8型機の墜落事故に関する暫定報告書を発表し、事故機の操縦士が、機体が急降下して墜落する直前までボーイングが定めたマニュアル通りに操縦していたと強調した。3月12日、アディスアベバのルイラク事故現場を調べる米当局の調査員ら(2019年 ロイター/Baz Ratner)

エチオピア政府は、アディスアベバ近郊で先月起きたエチオピア航空のボーイング737MAX8型機の墜落事故に関する暫定報告書を発表し、事故機の操縦士が、機体が急降下して墜落する直前までボーイング が定めたマニュアル通りに操縦していたと強調した。

一方のボーイングは、同型機に搭載されているソフトウエアを修正したことで「安全な飛行機がより安全になった」と宣言している。乗組員側の問題なのか、はたまたテクノロジーの問題か、相次ぐ墜落事故の原因を巡る論争は長期化しそうだ。

昨年10月に発生したインドネシアのライオン航空機墜落事故を受け、ボーイングと米連邦航空局(FAA)は各航空会社に対し、センサーの誤ったデータによって自動失速防止システムが作動し、機首が押し下げられた場合に操縦士が取るべき対応を伝えていた。

エチオピア航空機の操縦士も、最初はその指示に従って失速防止システム「MCAS」を解除したものの、その後、最大巡航速度を上回る速度での飛行中に、マニュアルに反して再びMCASを作動させていたことが、暫定報告書のデータや専門家の話で明らかになった。

●適切な対応とは

もしMCASが誤った状況で作動して機首を押し下げた場合、操縦士は操縦席の中央コンソールにある解除スイッチを2つ押し、電動トリムに流れる電気を止めることになっている。

通常トリムは航空機の姿勢を安定させるために使われるが、MCASでは自動的に機首を押し下げる。

暫定報告書によると、事故機の操縦士がMCASを解除するためにこの遮断スイッチを押した時、機体はニュートラルな体勢ではなく機首が下がった状態だったことが飛行データから分かった。

この体勢では操縦は困難であり、そのため操縦士がMCASを再び作動させた可能性があるという。

ボーイングのガイドラインは、機首を適切な位置にするために解除スイッチを押してめったに行わない手動操縦に切り替える前に、「必要に応じて操縦かんと電動トリムを使い、ピッチ(機首の上下)姿勢をコントロールする」よう操縦士に指示している。適切なトリムの設定については具体的な指示はない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米P&G、通期コア利益見通し上方修正 堅調な需要や

ワールド

男が焼身自殺か、NY裁判所前 トランプ氏は標的でな

ビジネス

ECB、6月以降の数回利下げ予想は妥当=エストニア

ワールド

IMF委、共同声明出せず 中東・ウクライナ巡り見解
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:老人極貧社会 韓国
特集:老人極貧社会 韓国
2024年4月23日号(4/16発売)

地下鉄宅配に古紙回収......繁栄から取り残され、韓国のシニア層は貧困にあえいでいる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    止まらぬ金価格の史上最高値の裏側に「中国のドル離れ」外貨準備のうち、金が約4%を占める

  • 3

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負ける」と中国政府の公式見解に反する驚きの論考を英誌に寄稿

  • 4

    休日に全く食事を取らない(取れない)人が過去25年…

  • 5

    「韓国少子化のなぜ?」失業率2.7%、ジニ係数は0.32…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    日本の護衛艦「かが」空母化は「本来の役割を変える…

  • 8

    中ロ「無限の協力関係」のウラで、中国の密かな侵略…

  • 9

    毎日どこで何してる? 首輪のカメラが記録した猫目…

  • 10

    便利なキャッシュレス社会で、忘れられていること

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 3

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人機やミサイルとイスラエルの「アイアンドーム」が乱れ飛んだ中東の夜間映像

  • 4

    天才・大谷翔平の足を引っ張った、ダメダメ過ぎる「無…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    アインシュタインはオッペンハイマーを「愚か者」と…

  • 7

    犬に覚せい剤を打って捨てた飼い主に怒りが広がる...…

  • 8

    ハリー・ポッター原作者ローリング、「許すとは限ら…

  • 9

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 10

    大半がクリミアから撤退か...衛星写真が示す、ロシア…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    浴室で虫を発見、よく見てみると...男性が思わず悲鳴…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中