最新記事

都市伝説

「MOMOチャレンジ」はフェイクニュースが産んだ都市伝説

2019年3月4日(月)18時40分
松丸さとみ

FOX 5 Atlanta-Youtube

<「子供を自殺するように仕向ける」と話題になったゲーム「MOMOチャレンジ」の存在は、デマだったことが明らかになった>

MOMOの噂で生まれる「集団ヒステリーの方が危険」

2月最後の週、「MOMOチャレンジで子どもたちが危険にさらされている」というニュースが英国を駆け巡った。英デイリーメール紙が被害に遭ったという子どもの話を写真入りで報じるなど、英国のメディアがこぞってMOMOチャレンジの話を取り上げたのだ。この騒ぎを受けて、日本でもソーシャルメディア(SNS)では注意喚起する投稿が拡散された。

しかしその直後から、MOMOチャレンジにまつわる一連の話は「フェイクニュース」だとの報道も相次いだ。英ガーディアン紙は、この噂から生まれる集団ヒステリーの方が危険だとする専門家の話を伝えている。

MOMOチャレンジを報じるさまざまな記事によると、このMOMOはペッパピッグなどの一見無害な子ども向けYouTubeビデオの中に突然現れたり、メッセージアプリで連絡してくるとされている。こうしたアプリがハッキングされてメッセージが送られてくるとしている説もある。MOMOは子どもに向かい、ナイフを喉元に持っていけ、自分に火をつけろ、大人には言うな、などの命令を下し、「さもないと呪う」というのだと言う。

前述のデイリーメールは、「日本人アーティストが作ったキャラクターに端を発したMOMOチャレンジに触発された子どもが自分の髪を切ってしまった」と写真入りで報じた。5歳の少女がオンラインで何かを見ていたところ(具体的に何を見ていたかは記事には書かれていない)、MOMOが現れて髪を切るよう命じたので、少女は自分で髪を切ってしまったというのだ。

デイリーメールによると、ここに掲載されている写真は、少女の親が髪型を直してもらおうと少女を連れて行った美容院が撮ったもの。記事の内容も、この美容院が注意喚起のためにFacebookに投稿した話が中心だった。しかし削除されたのか、3月3日時点で当該のFacebook投稿を見つけることはできなかった。

昨年夏の話が再燃した理由

ガーディアンによると、自殺防止の慈善団体サマリタンズや全英児童虐待防止協会(NSPCC)は、MOMOチャレンジ自体が危害を与えている証拠はなく、「大人が引き起こしたモラルパニックに過ぎない」として、メディア報道の過熱ぶりが人の自傷行為を促しかねないと警告しているという。

英国の子どもや若年層により安全なインターネット環境を整えることを目指す組織UKセイファーインターネットセンターはこの騒ぎを「フェイクニュース」と断じており、YouTubeも、同社のプラットホームでMOMOチャレンジらしきものは見つかっていないと話している。

MOMOチャレンジ自体は新しい話ではなく、本サイトでも昨年8月に報じた(現在は掲載していない)。ガーディアンによるとこの話が今になって再燃したのは、英マンチェスター郊外の小さな町、ウェストホートンに住む母親が、息子が学校で聞いてきた話としてMOMOチャレンジの噂を注意喚起の意味でFacebookグループに投稿したのが発端だったようだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米「夏のブラックフライデー」、オンライン売上高が3

ワールド

オーストラリア、いかなる紛争にも事前に軍派遣の約束

ワールド

イラン外相、IAEAとの協力に前向き 査察には慎重

ワールド

金総書記がロシア外相と会談、ウクライナ紛争巡り全面
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 2
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打って出たときの顛末
  • 3
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 4
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 5
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 6
    エリザベス女王が「うまくいっていない」と心配して…
  • 7
    主人公の女性サムライをKōki,が熱演!ハリウッド映画…
  • 8
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 9
    ただのニキビと「見分けるポイント」が...顔に「皮膚…
  • 10
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 1
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップを極めれば、筋トレは「ほぼ完成」する
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    「お腹が空いていたんだね...」 野良の子ネコの「首」に予想外のものが...救出劇が話題
  • 4
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 5
    千葉県の元市長、「年収3倍」等に惹かれ、国政に打っ…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    完璧な「節約ディズニーランド」...3歳の娘の夢を「…
  • 8
    イギリスの鉄道、東京メトロが運営したらどうなる?
  • 9
    どの学部の卒業生が「最も稼いでいる」のか? 学位別…
  • 10
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中