最新記事

戦争犯罪

「許そう、しかし決して忘れまい」と誓ったシンガポール、ナチスのかぎ十字ワッペン販売 アジアで薄れる戦争犯罪の影

2019年2月24日(日)11時00分
大塚智彦(PanAsiaNews)

パヤレバー空軍基地に隣接した場所に合うシンガポール空軍博物館(撮影筆者)

<第二次世界大戦で多大な死者を出し、戦争記憶の継承を大切にしている国の博物館で、まさに戦争犯罪を美化するようなものが置かれていた>

シンガポール空軍博物館内の土産物コーナーでナチスドイツの「ハーケンクロイツ(かぎ十字)」が描かれたワッペンが販売されていることがわかった。空軍博物館はパヤレバー空軍基地に隣接した地に立てられ、施設内には空軍士官用食堂も設けられるなど半ば公的機関であり、シンガポール政府、軍としての良識が問われかねない状況となっている。

2月22日の時点で空軍博物館1階にある「RSAFスバニアーズ(シンガポール空軍土産物コーナー)」には空軍関係のTシャツ、制服や飛行服の胸や上腕部につける部隊のロゴや飛行機のマークを表すワッペン、バックパックなどの装備品、各種航空機のプラモデルなどが沢山並べられて展示、販売されている。

その中のワッペンが並べられた棚には鷲とみられる鳥が頭を左に向け、両翼を広げてその下にかぎ十字のデザインが刺繍されたワッペンが販売されていた。値段は1個10シンガポールドル(約820円)となっている。

売店で働く女性従業員によると「私はこれが何を意味するどこの国のワッペンなのか、全く知りません」と話しており、「この商品はシンガポール人であるボスが選んでここで販売しているもので、商品の選択に関しても私は関係ありません」と述べた。

newsweek_20190224_120014.JPG

さりげなく販売されているナチスのかぎ十字ワッペン(撮影筆者)

アジアでは関心薄いナチス

東南アジアや東アジアではナチスドイツに関して、特に若い世代では知識が深くなく、関心も薄い。1月25日には日本のAKB48 の姉妹グループでタイのバンコクで活動するBNK48 のメンバーの一人が、リハーサル中に「かぎ十字」がデザインされたTシャツを着用、ネットで写真が拡散され非難を浴びる事案も起きている。

このためこのメンバーと劇場支配人が1月26日にバンコクのイスラエル大使館を訪問して大使に謝罪する事態に追い込まれた。

BNK48 は声明の中で「不適切なデザインの衣装が、世界の人道に反する過去の出来事から影響を受けた人びとに苦痛と動揺を与えてしまった」と謝罪している。

また韓国のヒップホップグループ「BTS(防弾少年団)」も過去にナチス親衛隊(SS)のシンボルをデザインした帽子を着用、別の機会にはナチスを模倣したように見える旗を掲げたパフォーマンスをしたことに対し2018年11月に米ユダヤ人組織が抗議、謝罪を要求する事態も起きている。

日本では2016年に女性アイドルグループ「欅坂46」のライブ衣装がナチスドイツの制服に似ているとして運営側が謝罪する事案が記憶に新しい。

reuter_20190224_120219.JPG

問題のワッペンが販売されているRSAFスバニアーズ(撮影筆者)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英金利は低下へ、インフレ目標達成視野=テイラー中銀

ビジネス

地政学の問題、ユーロ圏の成長リスク高める=ECB副

ビジネス

為替の行き過ぎた動きにはあらゆる手段排除せず適切に

ビジネス

世界のM&A、12月は前年比112%増の6110億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広がる波紋、その「衝撃の価格」とは?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救った...実際の写真を公開、「親の直感を信じて」
  • 4
    飛行機内で「マナー最悪」の乗客を撮影...SNS投稿が…
  • 5
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 6
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 7
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「普通じゃない...」「凶器だ」飛行機の荷物棚から「…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 3
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 4
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 5
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 6
    Netflix『ストレンジャー・シングス』最終シーズンへ…
  • 7
    次々に船に降り立つ兵士たち...米南方軍が「影の船団…
  • 8
    ベネズエラの二の舞を恐れイランの最高指導者ハメネ…
  • 9
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 10
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 4
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 5
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 6
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切…
  • 7
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中