最新記事

選挙

タクシン元首相が続々立候補!? タイ総選挙、当選狙う候補が裏技 民政移管は実現するか?

2019年2月6日(水)19時15分
大塚智彦(PanAsiaNews)


この人も、あの人も、みんなタクシン候補!? 沢山の「タクシン候補」について伝える現地メディア SpringNews / YouTube

これは投票で農村部や貧困層での両者の高い人気、支持にあやかった「便乗戦略」で、姓はそのままで名を改名して届けたものという。タイでは比較的容易に改名が行われており、選挙立候補に際しての改名も「改名は候補者の判断であり法律違反ではない」(タイ国家貢献党関係者)としており、軍政のアヌポン内相も「(改名は)違法ではないが、適切かどうかの判断に関してはコメントしない」との立場を明らかにしている。

地元「バンコク・ポスト」紙に対し、「タクシン候補者」の1人は「有権者に自分の名前を覚えてもらうために(タクシンという名前を)選んだ」と話しており、タクシン支持者からの票を期待した結果であることを明らかにしている。

本当のタクシン、インラックという兄妹の首相経験者は、軍政からの法的追及を逃れるために海外に滞在中で、2月5日の中国春節(正月)を前にインラック前首相はインターネットのツイッター上に「国民の声を本当に反映した政府が樹立されて、今年がタイにとって輝く年になることを祈念する」との期待を寄せた。

総選挙について触れたインラック前首相のツイート
 

軍政トップが狙う政権維持戦略

2014年5月のクーデターでインラック首相から政権を奪取した軍政は、国内の政治基盤の安定を図る一方で、国民の「総選挙実施による民政移管」を求める声に配慮しながらも「時期尚早」として総選挙を先送りしてきた。

この間タイ国民が敬愛するプミポン国王が2016年10月に死去し、軍政の新憲法法案に修正を求めるなど後継のワチラロンコン国王は軍政との間に「すきま風や軋轢」が伝えられる。また、親軍政政党の結成で合法的に総選挙への参加とプラユット首相自身の首相続投への道が開かれたこと、国内外の「民政移管の声、反軍政」世論の高まりなどを背景に、軍政は2018年末から総選挙実施のタイミングを計ってきた経緯がある。

総選挙日程「王室行事に配慮し」先送り

軍政は2018年12月11日にクーデター以降禁止していた政党による政治活動を全面的に解禁し、当初2月24日の総選挙実施を明らかにしていた。しかし、ワチラロンコン国王の戴冠式が5月4日から6日に予定されることから、総選挙実施とその後の国会招集などの政治日程との重複を理由に3月24日に延期された。この延期に関してはバンコク市内で人権活動家や学生による「延期反対、総選挙早期実施」を求めるデモや集会も起きるなど、国民の民政移管を求める声が切実なものになっていることを象徴していた。

もっとも軍政側や結成間もない親軍政政党などの時間稼ぎが延期の背景にあるとの指摘もあり、国民が反対することが困難な王室行事を理由に掲げて総選挙準備を進めたい軍政による恣意的な判断とも言われている。

予定では2月8日の立候補届け出締め切りの後、15日には立候補者・首相候補者の氏名が発表される。3月4日から16日まで国外の期日前投票、17日に国内の期日前投票が実施されて3月24日の投票日を迎える。その後集計が行われ5月9日ごろまでに選挙管理委員会による正式な集計結果が発表される見込みという。票の確定後15日以内に新首相を指名する議会が招集される予定だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米PCE価格、6月前年比+2.6%に加速 前月比+

ビジネス

再送-トランプ大統領、金利据え置いたパウエルFRB

ワールド

キーウ空爆で8人死亡、88人負傷 子どもの負傷一晩

ビジネス

再送関税妥結評価も見極め継続、日銀総裁「政策後手に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから送られてきた「悪夢の光景」に女性戦慄 「這いずり回る姿に衝撃...」
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 4
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 5
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 6
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    街中に濁流がなだれ込む...30人以上の死者を出した中…
  • 9
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 10
    50歳を過ぎた女は「全員おばあさん」?...これこそが…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの習慣で脳が目覚める「セロ活」生活のすすめ
  • 3
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 4
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
  • 5
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    「様子がおかしい...」ホテルの窓から見える「不安す…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 3
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 4
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 5
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中