最新記事

袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ

EU、離脱再交渉拒否 そのとき英議会で何が起きるか?

2019年2月10日(日)09時17分

英議会下院はEU離脱について14日審議する。写真はメイ英首相。ブリュッセルで撮影(2019年 ロイター/Francois Lenoir)

英議会下院は14日、欧州連合(EU)離脱について審議する。もっとも、メイ首相とEUが結んだ合意案について再び是非を問うわけではない。

首相はEUに対し、1月に英議会で否決された合意案に修正を加えるよう働きかけており、「可及的速やかに」修正案を持ち帰って議会採決に諮ると表明したが、日程は決まっていない。

首相はまた、2月13日までに「意味のある採決」ができる修正案を持ち帰れない場合には、議会が14日に離脱について審議するのを認めると約束した。

14日に何が行われるのかをまとめた。

何を審議するのか

首相は13日、EUとの修正協議がどこまで進展したかを議会で発表する。

14日は、離脱問題全般を巡る動議が提出され、それに基づいて審議が行われる。これに対し、前回1月29日に審議された動議は、離脱交渉を巡って首相が示した方針について問うものだった。

議員は修正を提案できるのか

1月29日と同様、議員は修正案を提出できる。離脱協議の主導権を政府から議会に移すなど、29日と似た修正案が多く提出されそうだ。

修正案が可決されれば、その影響は甚大だ。離脱の阻止、延期、再交渉などを望む議員らは、それらを推進する法的な手段を得る。

EUは今のところ再交渉には応じないと表明しているため、その他議員は首相案に代わる案を提出し、首相に軌道修正してEUとの連携を強化するか、国民投票を再実施するよう訴えるだろう。

野党労働党のイベット・クーパー議員および与党保守党のニック・ボールズ議員は、議会に離脱日延期を求める権限を持たせるよう提案し、1月29日に否決されたが、ボールズ氏は2月14日に再度提出する意向を示している。

ある保守党議員は6日、EUが再交渉に前向きであることを首相が示せるなら、首相は14日の議会対決をかわし、もう少し時間を稼げるだろうと述べた。

採決は行われるか

ジョン・バーコー議長が、採決にかけるべき修正案があるかどうかを決める。採決が決まった修正案については、1つずつ投票が行われる。その後、動議自体の文言を承認するかどうかの投票が実施される。

審議の前に、議員は現在1日限りとされている審議日程案への同意を求められる。仮に1日では足りないという結論になれば、採決は理論上、翌週に持ちこされる。

14日の審議は確定なのか

仮に首相が14日までにEUから合意案の修正を勝ち取り、英議会で採決にかけられるなら、離脱全般を巡る14日の審議は見送られる。しかし首相は14日までにEUから修正を引き出せない見通しだ。

英メディアによると、メイ首相の合意案を巡る再採決は、早くても25日の週になる見通し。

[ロンドン 7日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 世界も「老害」戦争
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月25日号(11月18日発売)は「世界も『老害』戦争」特集。アメリカやヨーロッパでも若者が高齢者の「犠牲」に

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=序盤の上げから急反落、テクノロジー株

ビジネス

NY外為市場=ドル上昇、9月雇用統計受け利下げ観測

ビジネス

FRB当局者、金融市場の安定性に注視 金利の行方見

ワールド

ロシア、ウクライナ東部ハルキウ州の要衝制圧 軍参謀
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界も「老害」戦争
特集:世界も「老害」戦争
2025年11月25日号(11/18発売)

アメリカもヨーロッパも高齢化が進み、未来を担う若者が「犠牲」に

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 4
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 5
    幻の古代都市「7つの峡谷の町」...草原の遺跡から見…
  • 6
    アメリカの雇用低迷と景気の関係が変化した可能性
  • 7
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 8
    【クイズ】中国からの融資を「最も多く」受けている…
  • 9
    EUがロシアの凍結資産を使わない理由――ウクライナ勝…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR動画撮影で「大失態」、遺跡を破壊する「衝撃映像」にSNS震撼
  • 4
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 5
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 7
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 8
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中