最新記事

事故

インドネシア、落盤事故で60人以上生き埋めか 劣悪環境の違法金鉱山、救助活動は手作業で

2019年2月27日(水)19時01分
大塚智彦(PanAsiaNews)

落盤事故のあった金鉱山では照明もない中、懸命な救助活動が続く。Antara Foto Agency - REUTERS

<様々な鉱物資源に恵まれたインドネシアだが、その採掘は劣悪な環境下で行われるものが少なくない>

インドネシアの国家災害対策庁(BNPB)は2月27日、スラウェシ島北スラウェシ州ボラアン・モンゴンドウ県ロラヤン郡バカン村にある違法に金を採掘している鉱山で26日に大規模な落盤事故があり、これまでに13人が救出、1人の死亡が確認されたが、なお坑内に少なくとも60人の作業員が生き埋め状態になっていることを明らかにした。

27日午前、BNPBのストポ・ヌグロホ報道官の会見によると、26日午後9時ごろに同鉱山で地盤が緩んだことが原因とみられる落盤事故が発生、坑道が崩落して内部に作業員が閉じ込められる事故が発生したという。

駆けつけた軍や警察、BNPB、赤十字などの救援隊による夜を徹しての必死の救出作業の結果、27日午前5時までに13人が負傷しながらも救出され、1人の遺体が収容されたという。死者3人との情報もある。

そして坑内にはなお少なくとも60人が閉じ込められているというが、ヌグロホ報道官は生存の可能性があり、懸命の救出作業を継続していると述べた。

救助作業にあたる救助隊員によると、崩壊した坑道の入り口付近で内部から人の声が聞こえており、「内部の作業員が生存しているのは確実」として作業を急いでいる。

BNPBはツイッター上に現地の救出作業の様子をアップしているが、その映像によると急な坂道の下方に坑道の入り口があるとみられるが、急峻な傾斜と崩れたような山肌が現場に近づくことを困難にしているもようだ。

現場の状況から重機などの機材を投入することは困難とみられ、BNPBなどによると救出作業はロープと鍬(すき)などの道具で進めるしかない状況という。

各地で横行する違法採掘

スラウェシ州に限らずインドネシアでは豊富な地下資源を巡って違法採掘が横行しており、今回のような事故も頻発しているという。

金、銅、石炭、ボーキサイト、ニッケルなどの違法採掘は東部パプア州、スマトラ島でも行われ、中国人不法労働者が現場作業員として働いているとの情報も取り締まり当局には多数寄せられている。

2018年12月にはパプア州でこうした鉱山の現地視察をしていた日本人4人が資格外活動をしたとして出入国管理法違反で禁固5カ月15日と罰金1000万ルピア(約7万7000円)の実刑判決を受ける事件も起きている(邦人4人に禁固刑判決のインドネシア 金採掘場を視察だけで実刑の特殊事情とは?)。

この時は日本人4人のほかに外国人37人も摘発され、その中には16人の中国人が含まれていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪が16歳未満のSNS禁止措置施行、世界初 ユーチ

ワールド

ノーベル平和賞受賞マチャド氏の会見が中止、ベネズエ

ワールド

カンボジア高官「タイとの二国間協議の用意」、国境紛

ワールド

メキシコ、9日に米当局と会談へ 水問題巡り=大統領
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【クイズ】アジアで唯一...「世界の観光都市ランキング」でトップ5に入ったのはどこ?
  • 3
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「財政危機」招くおそれ
  • 4
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 5
    「韓国のアマゾン」クーパン、国民の6割相当の大規模情…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 8
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    ゼレンスキー機の直後に「軍用ドローン4機」...ダブ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 7
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 10
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中