最新記事

袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ

メイ首相は「悲惨なほど交渉力なく頑固一徹」 EU離脱混迷の責任は...

Separation Anxieties

2019年2月5日(火)12時30分
ナイジェル・ファラージュ(イギリス独立党元党首)

イギリスは今、前例のない領域に足を踏み入れている。史上初めて、議会が国民の意思を受け入れることを拒んでいるのだ。2016年の国民投票では1740万人強が離脱を支持した。残留派に130万票の差をつけての勝利だ。そして2017年の総選挙では二大政党がいずれもEU離脱の実現を公約し、圧倒的な支持を得たのだった。

確かに今は、下院議員650人の過半数が離脱を望んでいない。しかし2017年の時点では、500人近い議員がリスボン条約第50条の適用を支持していた。3月29日の期限までに離脱協定が成立しない場合、イギリスにはEU法が適用されなくなるとする条項だ。つまり、合意なしなら自動的にEU離脱が実現するのだ。

残念ながら、今の議会が自動的離脱を認めるとは思えない。むしろ第50条の発動延期を求め、その間に政府がEUからさらなる譲歩を引き出すことを望むだろう。しかしEU側の譲歩は期待できない。一方で残留派は国民投票のやり直しを要求し続けるだろう。しかし世論調査機関ユーガブの最近の調査でも、2度目の国民投票の実施に賛成する人は8%にすぎない。

仮にもリスボン条約第50条の発動が延期され、2度目の国民投票が実施されたとして、それでも筆者の予想では、イギリスの有権者は前回よりもさらに断固たる決意で、より大差をつけてEU離脱を支持するだろう。もしかしたら、それが本物のEU離脱を実現する唯一最善の道かもしれない。

<2019年2月12日号掲載>

【関連記事】ブレグジット後の英国は「海の覇者」として復活する

※この記事は「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集より。詳しくは2019年2月12日号 「袋小路の英国:EU離脱3つのシナリオ」特集をご覧ください。

ニューズウィーク日本版 韓国新大統領
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月10日号(6月3日発売)は「韓国新大統領」特集。出直し大統領選を制する「政策なきポピュリスト」李在明の多難な前途――執筆:木村 幹(神戸大大学院教授)

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロサンゼルスで移民の抗議活動、トランプ政権が州兵派

ワールド

コロンビア大統領選の候補者、銃撃される 容疑者逮捕

ビジネス

CPIや通商・財政政策に注目、最高値視野=今週の米

ワールド

マスク氏との関係終わった、民主に献金なら「深刻な結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:韓国新大統領
特集:韓国新大統領
2025年6月10日号(6/ 3発売)

出直し大統領選を制する李在明。「政策なきポピュリスト」の多難な前途

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 3
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラドールに涙
  • 4
    猫に育てられたピットブルが「完全に猫化」...ネット…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 7
    日本の女子を追い込む、自分は「太り過ぎ」という歪…
  • 8
    ウクライナが「真珠湾攻撃」決行!ロシア国内に運び…
  • 9
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 10
    ひとりで浴槽に...雷を怖れたハスキーが選んだ「安全…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中