最新記事
イギリス

英空港を襲ったドローン騒ぎ、「そもそもドローンなんかなかった」!?

2018年12月25日(火)18時30分
松丸さとみ

なぜドローンを撃ち落とせなかったのか

前述のデイリーメールの記事には、なかなか解決しない問題に苛立ちを隠せない人たちが次々とコメントを投稿。現在コメント数は1500件以上に上っている。

「そもそもドローンは一般客に売るべきじゃない」「たぶん11歳のパソコンの天才のしわざ」「最新のテクノロジーをもってしてもドローンが充電に戻るところすら分からないの? 性能のいい双眼鏡が必要なんじゃ?」などの意見があった。

「なんで撃ち落とさないの?」という意見も多くみられたが、実際に当局側も手段の1つとしてドローン撃墜を考えていたようだ。サンデー・エクスプレスは21日、銃を携帯した警官を現場につかせ、必要であれば発砲する用意があったとの警察側の発言を報じていた。

しかしドローンを撃ち落とすのは言うほど簡単ではない、と英タブロイド紙のザ・サンは伝えている。上空に向けて発砲して目標物に当たらなかった場合、銃弾は遠くまで飛ぶ可能性がある。そのため、4キロ四方を封鎖しなければいけなくなるという。また、ドローンを空港外で撃ち落とす場合、銃弾が通過する場所やドローンが落ちる場所の土地所有者の許可が必要になる。また、撃たれたドローンの破片が民家を直撃したり、周辺に散らばったりする可能性もある。

ドローン騒ぎで浮き彫りになった問題

今回のドローン騒ぎで、英国で2つの問題が浮き彫りにされた。まず、容疑者2人が逮捕された際に、メディアがこぞって2人をあたかも犯人かのように報じた点だ。23日付のガーディアンは、警察が容疑者の名前を公表していなかったにもかかわらず、23日付朝刊の中には容疑者の顔写真とともに「クリスマスをぶち壊したのはこのバカどもか」と一面に掲載したものもあったと指摘している。

警察側は、容疑者2人は捜査に協力的だったとした上で、「取り調べの一環で逮捕された場合、それは有罪という意味ではない。2人の身元を公表するつもりはない」と声明で述べている。

容疑者が釈放されたことで犯人探しは振り出しに戻る形となった。動機は今のところはっきりしていないが、ガトウィック空港のスチュワート・ウィンゲート最高経営責任者(CEO)は、今回の出来事で英国における航空事業の課題が浮き彫りになったと指摘。国の重要なインフラをドローンがこのような形で閉鎖できてしまうことが正しいわけがない、と語り、こうしたことが2度と起きないよう解決法をじっくり考えなくてはいけないと述べている。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中