最新記事

韓国

北朝鮮への対応巡り韓国・文政権内に亀裂? 非核化交渉の妨げに

2018年12月11日(火)18時07分

交渉の障害

文政権の中で論争があったことはこれまで報道されていなかったが、このことは、米国政府を味方にしつつ北朝鮮との関係を進展させる方法について、韓国内部で対立が広がっていることを示している。

状況に詳しい複数の当局者によれば、韓国政府の中には「北朝鮮が核開発プログラムを放棄するまでは、米国主導の制裁・圧力という作戦から逸脱していると見られるわけにはいかない」という声もあれば、南北間の絆を強化していくことで、停滞した外交プロセスを促進する効果があると感じる向きもあるという。

「韓国政府内の亀裂のせいで、米国との十分な協議を経ることなく北朝鮮との接近を急ぎすぎるようなことがあれば、核協議だけでなく、韓米同盟や南北関係にとっても妨げとなる可能性がある」と、峨山政策研究院の申範澈(シン・ボンチュル)上席研究員は指摘する。

今年前半、南北間の緊張緩和に続いて、北朝鮮指導者の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長とトランプ米大統領が和解に向けた協議を行った後、トランプ氏は文大統領に対し米朝の間で「交渉責任者」を務めるよう求めた。

だが、核協議の停滞を巡って米朝両政府が互いを非難する中、その役割はますます困難になりつつある。

米国の当局者は、北朝鮮が非核化を完了するまでは厳しい制裁を続けなければならないと主張する。一方、北朝鮮側は、すでに主要施設を解体するという妥協を示しているのだから、米国は制裁緩和と朝鮮戦争(1950-53年)の終結を宣言するという形で応じるべきだと主張する。

新米国安全保障研究所(CNAS)のアジア専門家で、米韓双方の当局者に強い人脈を持つパトリック・クローニン氏は、「他の側近と異なり、趙統一担当相は、南北和平を願う自身の強い思いと、強固な韓米関係を維持することの重要性への理解との間でバランスを取っている」と語る。

「韓米同盟におけるある程度の意見の不一致は不可避であり、心配する必要はない。憂慮すべきは、北朝鮮に対応するうえで米韓のアプローチが明らかに分裂する場合だ」

韓国大統領府はコメントを拒否しているが、文大統領は3日、記者団に対し、韓国と米国の間に意見の不一致があるという見方には「根拠がない」と述べ、北朝鮮の非核化に対する米韓両国の立場に違いがないことを理由に挙げた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

企業向けサービス価格10月は+2.7%、日中関係悪

ビジネス

アックマン氏、新ファンドとヘッジファンド運営会社を

ワールド

欧州議会、17億ドルのEU防衛産業向け投資計画を承

ワールド

台湾、国防費400億ドル増額へ 総統「抑止力を強化
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ガザの叫びを聞け
特集:ガザの叫びを聞け
2025年12月 2日号(11/26発売)

「天井なき監獄」を生きるパレスチナ自治区ガザの若者たちが世界に向けて発信した10年の記録

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 2
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ成長株へ転生できたのか
  • 3
    老後資金は「ためる」より「使う」へ──50代からの後悔しない人生後半のマネープラン
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 6
    放置されていた、恐竜の「ゲロ」の化石...そこに眠っ…
  • 7
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 8
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 9
    使っていたら変更を! 「使用頻度の高いパスワード」…
  • 10
    トランプの脅威から祖国を守るため、「環境派」の顔…
  • 1
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 2
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判殺到、そもそも「実写化が早すぎる」との声も
  • 3
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるようになる!筋トレよりもずっと効果的な「たった30秒の体操」〈注目記事〉
  • 4
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    マムダニの次は「この男」?...イケメンすぎる「ケネ…
  • 7
    AIの浸透で「ブルーカラー」の賃金が上がり、「ホワ…
  • 8
    「まじかよ...」母親にヘアカットを頼んだ25歳女性、…
  • 9
    海外の空港でトイレに入った女性が見た、驚きの「ナ…
  • 10
    【銘柄】イオンの株価が2倍に。かつての優待株はなぜ…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 3
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 6
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 7
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦…
  • 8
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 9
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 10
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中