最新記事

宇宙探査

NASAの太陽探査機、太陽に接近し、コロナから伸びた長い流線をとらえる

2018年12月18日(火)18時00分
松岡由希子

コロナから長く伸びるストリーマをとらえた。画像中心部で光っている物体は水星。 NASA/Naval Research Laboratory/Parker Solar Probe

<NASAによって打ち上げられた太陽探査機が、太陽に接近し、太陽風やコロナにまつわる科学的データを収集することに成功した>

米航空宇宙局(NASA)によって2018年8月12日に米フロリダ州ケープカナベラル空軍基地から打ち上げられた太陽探査機「パーカー・ソーラー・プローブ」は、同年10月31日から11月11日までの間、太陽に接近し、太陽風やコロナにまつわる科学的データを収集することに成功した。

その一部が、12月12日、米ワシントンD.C.で開催されたアメリカ地球物理学連合(AGU)の秋期総会で公開されている。

2024年に太陽に最接近の予定

「パーカー・ソーラー・プローブ」は、1958年に太陽風の存在を初めて提唱したアメリカの宇宙物理学者ユージン・ニューマン・パーカー博士を称えて名付けられた。

太陽物理学における3つの謎、すなわち、コロナと呼ばれる太陽の外層大気が光球面よりも300倍の高温になっている理由、高速な太陽風の仕組み、高エネルギー粒子が太陽から高速で放出されるメカニズムを解明するべく、高温の太陽にかつてないほど接近して、2025年までのミッションを実行している。

(参考記事)太陽コロナに触れる探査機、熱で溶けない4つの理由:NASAが8月打ち上げへ

「パーカー・ソーラー・プローブ」は、太陽に最も接近した11月5日、宇宙船として過去最速の時速21万3200マイル(約34万3111キロメートル)を記録し、11月8日には、太陽の表面から約1690万マイル(約2720万キロメートル)の地点で、撮影装置「WISPR」を通じ、コロナから長く伸びる流線(ストリーマ)をとらえた。この流線は太陽活動が活発な領域でよくみられるもので、2本の光とともに、その形状が極めて鮮明に映し出されている。ちなみに、画像中心部で光っている物体は水星だ。

wispr-big.jpg

(NASA/Naval Research Laboratory/Parker Solar Probe)

太陽風の吹き荒れる様子を観測

このほか、「パーカー・ソーラー・プローブ」の熱シールドの先に設置され、太陽風のイオンごとの熱的特性を計測する「ソーラー・プローブ・カップ」では、太陽風の吹き荒れる様子が観測されている。

matuoka1218b.jpg

12月12日、アメリカ地球物理学連合(AGU)の秋期総会に登壇した米航空宇宙局のニッキー・フォックス博士は「このような『パーカー・ソーラー・プローブ』のミッションは、太陽物理学者が60年以上待ちわびていたものです。解明したい太陽の謎は、コロナの中にあります」と述べ、太陽物理学のさらなる進歩に期待を寄せている。

「パーカー・ソーラー・プローブ」は、2019年4月にも太陽に再び最接近する予定となっており、今後、どのような観測データがもたらされるのか、注目されている。そして、2024年には太陽の約600万kmほどに最接近すると予測されている。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

赤沢再生相、ラトニック米商務長官と3日と5日に電話

ワールド

OPECプラス有志国、増産拡大 8月54.8万バレ

ワールド

OPECプラス有志国、8月増産拡大を検討へ 日量5

ワールド

トランプ氏、ウクライナ防衛に「パトリオットミサイル
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプvsイラン
特集:トランプvsイラン
2025年7月 8日号(7/ 1発売)

「平和主義者」のはずの大統領がなぜ? 核施設への電撃攻撃で中東と世界はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚人コーチ」が説く、正しい筋肉の鍛え方とは?【スクワット編】
  • 4
    孫正義「最後の賭け」──5000億ドルAI投資に託す復活…
  • 5
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「詐欺だ」「環境への配慮に欠ける」メーガン妃ブラ…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 10
    反省の色なし...ライブ中に女性客が乱入、演奏中止に…
  • 1
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 2
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 3
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 4
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 5
    仕事ができる人の話の聞き方。3位は「メモをとる」。…
  • 6
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    普通に頼んだのに...マクドナルドから渡された「とん…
  • 9
    砂浜で見かけても、絶対に触らないで! 覚えておくべ…
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「飲み込めると思った...」自分の10倍サイズのウサギに挑んだヘビの末路
  • 3
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 6
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 9
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 10
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中