最新記事

米軍事

アフガン介入17年、終わりなき泥沼

War Without End

2018年12月11日(火)18時20分
ジェフ・スタイン(ジャーナリスト)

1211ahugan2.jpg

昨年10月、ホワイトハウスのトランプ大統領、マティス国防長官(左)、ケリー首席補佐官(右) Andrew Harrer-Pool/GETTY IMAGES

再び勢いづくタリバン

今年10月7日で、アメリカのアフガニスタン介入から17年が過ぎた。犠牲となった兵士の数こそベトナム戦争の5万8200人に遠く及ばないが、この戦争はアメリカ史上最も長く、最も高くついた戦争だ。

現在、アメリカは年に約450億ドルをアフガニスタンでの軍事作戦に投じている。これまでにかかった費用は合計で、8410億ドルから(退役軍人の心身ケアなども計算に入れれば)1兆700億ドルとされる。

軍隊の疲弊も激しい。どれだけの兵士がアフガニスタンに何度派遣されたのか、正確な数は分からない。だがランド研究所によれば、01年の同時多発テロ以来、合計277万人の兵士が世界各地(主として中東と南アジア)へ、延べ540万回も派遣されているという。

7月末までにアフガニスタンで2372人の兵士が死亡し、2万320人が戦闘で重傷を負ったと国防総省は発表している。だがブラウン大学ワトソン国際関係研究所の報告によれば、「少なくとも97万の退役軍人が(アフガニスタンとイラク戦争に従軍したことが原因と認定された)障害を負っている」。

現地住民の被害はもっと甚大だ。ブラウン大学の報告によれば、16年半ばまでに戦闘地域で計17万3000人のアフガン人とパキスタン人が死亡、18万3000人が負傷した。

かつて大英帝国と戦い、1979年のソ連による侵攻にも耐えてきたアフガニスタン。その国にアメリカは乗り込み、一度はタリバン政権を首都カブールから駆逐し、平和と民主主義をもたらすつもりでいた。

しかし夢は破れ、15年には民主化どころかタリバンと現政権の共同統治を視野に、過激派組織を和平交渉に応じさせることを目標にしていた。しかし、このもくろみも失敗に終わった。快進撃に勢いづくタリバンはアシュラフ・ガニ大統領の人気低迷に乗じて、交渉より駐留米軍の完全撤退が先だと態度を硬化させている。

国防総省と国務省は「何とか面目を保てる取引をタリバン側に求めている」と軍事ブログ「ロング・ウォー・ジャーナル」のトーマス・ジョスリンは言う。「タリバンから『帰ってもいい』と言ってもらいたいのだ。タリバン側はとにかく米軍を追い出したい。それだけだ」

ワシントンに広がる噂では、トランプはアフガニスタンを見限るという結論に達している。撤退を20年に開始すべく、近くスケジュールを発表するつもりだという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

焦点:昨夏の市場暴落再来に警戒感、大口投資家が備え

ビジネス

香港中銀が為替介入、ペッグ下限到達で12億米ドル売

ビジネス

午後3時のドルは144円半ばで上値重い、FRBの独

ビジネス

独消費者信頼感、7月は-20.3に悪化 貯蓄意欲が
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係・仕事で後悔しないために
  • 3
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々と撤退へ
  • 4
    サブリナ・カーペンター、扇情的な衣装で「男性に奉…
  • 5
    人口世界一のインドに迫る少子高齢化の波、学校閉鎖…
  • 6
    【クイズ】北大で国内初確認か...世界で最も危険な植…
  • 7
    「子どもが花嫁にされそうに...」ディズニーランド・…
  • 8
    都議選千代田区選挙区を制した「ユーチューバー」佐…
  • 9
    韓国が「養子輸出大国だった」という不都合すぎる事…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 7
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 8
    定年後に「やらなくていいこと」5選──お金・人間関係…
  • 9
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 10
    「アメリカにディズニー旅行」は夢のまた夢?...ディ…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 9
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 10
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中