最新記事

米中関係

「キッシンジャー・習近平」会談の背後に次期米大統領候補

2018年11月12日(月)10時19分
遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)

すなわち、習近平は「中国はこれだけ努力しているのだから、アメリカも努力すべきだ」という、上から目線の姿勢を貫いているのに対して、キッシンジャーの方は「中国が努力してきたことを高く評価する。アメリカももっと努力すべきだ」と回答している。なぜなら「中国の努力を高く評価する」と言った上で、「米中双方とも~しなければならない」と言っているからだ。それはトランプ政権のやり方を非難する方向でしかない。

また、11月末にアルゼンチンで開催されるG20における米中首脳会談に関しては、習近平はただ「会談をすることになっている」と言い、「意見を交換してもいい(「可以」という中国語を使っている)」と言っているのに対して、キッシンジャーは「会談が成功することを希望する」と、期待感を述べている。

習近平の「上から目線」は、実は、「キッシンジャー・習近平」会談を仕掛けたのがアメリカ側であり、米中首脳会談を持ちかけたのもトランプ側であるということに由来する。中間選挙前の11月1日に米中首脳電話会談があったのも、あくまでもトランプ側からの接触だった。人民網は、わざわざ「習近平はトランプの要請に応じて電話会談をした」と明言しているくらいだ。

習近平がキッシンジャーとの対談で「可以」(~してもいい)という言葉を使ったのは、トランプが電話で「(アルゼンチンでのG20 において)私たちはいくつかの重大な問題について深く踏み込んだ議論をすることができる」と言ったのを受けたものと解釈される。

「キッシンジャー・習近平」会談の仕掛け人は次期米大統領選候補・ブルームバーグ氏

2002年から2013年までニューヨーク市長を務めていたマイケル・ブルームバーグ氏は、1981年にアメリカの大手総合情報サービス会社である「ブルームバーグ」をニューヨークに設立した。

そのブルームバーグ氏は2018年10月10日には、2020年の大統領選に備えて、アメリカの民主党に登録している。「ブルームバーグ」紙が伝えているので、間違いはないだろう。民主党には「これぞ!」という大物がいないと中国の環球時報が書いていると、11月10日付のコラム<中国はアメリカ中間選挙の結果をどう見ているか――「環球時報」社説>に書いたが、なかなかの候補がいるように見える。但し、残念ながらマイケル・ブルームバーグ氏は1942年2月生まれの76歳なので、大統領選のときには78歳を過ぎており、79歳近くになっている。約80歳だと見ると、厳しい側面は否めないだろう。もっとも、マレーシアのマハティール首相(93歳)のことを考えれば、まだ「若者」か。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、需給面での売りで 一巡後は小

ビジネス

利上げ「数カ月に1回」の声、為替の影響に言及も=日

ワールド

トランプ氏、ウクライナ和平の進展期待 ゼレンスキー

ビジネス

韓国クーパン創業者、顧客情報大量流出で初めて正式謝
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 2
    マイナ保険証があれば「おくすり手帳は要らない」と考える人が知らない事実
  • 3
    【銘柄】子会社が起訴された東京エレクトロン...それでも株価が下がらない理由と、1月に強い秘密
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 6
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」と…
  • 7
    「アニメである必要があった...」映画『この世界の片…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    2026年、トランプは最大の政治的試練に直面する
  • 10
    アメリカで肥満は減ったのに、なぜ糖尿病は増えてい…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 7
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 7
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 10
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中