最新記事

歴史問題

徴用工判決が突きつける「日韓国交正常化の闇」 韓国大法院判決全文の熟読で分かったこと

2018年11月9日(金)18時55分
五味 洋治(東京新聞 論説委員)*東洋経済オンラインからの転載

10月30日に韓国大法院で行われた徴用工裁判の様子 Kim Hong-Ji / REUTERS

10月30日に韓国の大法院(最高裁に相当)が「元徴用工」に対して、計4億ウォン(約4000万円)の支払いを命じた判決に対する批判が、日本で収まらない。日本政府は、過去に日韓両政府が合意した内容を否定するものとして、「日韓関係の法的基盤が揺らいでしまう」「100%、韓国側の責任において(解決策を)考えることだ」(河野太郎外相)と強く反発し、韓国政府の対応を求めている。文在寅大統領は判決について発言しておらず、対応に困っていることがうかがえる。

しかし、大法院の判決文を熟読すれば、「韓国側の約束違反」というだけではない、日韓国交正常化時の「闇」も浮かんでくる。

募集広告と全く違う苛酷な労働

判決文はA4用紙約50枚にわたる膨大な量だ。原文にも目を通したが、判決文独特の表現が多いため、正確に理解するのが難しい。そこで日本の有志の弁護士が日本語に仮訳したものを参考にしながら、判決文を熟読してみた。

判決文は大きく、判決主文、事実関係の経過、判決に反対した裁判官と、同意した裁判官の補足意見からなる。

日本は第2次世界大戦中、労働力不足を補うため、日本が統治していた朝鮮半島からも人員を動員した。最初は募集広告を通じ、戦争の最終段階では「国民徴用令」によって、本人の意思に関係なく労働させた。4人の原告について判決文は、一般的呼称である「徴用工」という表現は使わず、強制動員被害者と呼んでいる。その理由は、原告がいずれもが新日鉄住金(当時は日本製鉄)の募集に応じて日本で働くことになったからだろう。

原告のうち2人は1943年頃、旧日本製鉄が平壌で出した、大阪製鉄所の工員募集広告を見て応募した。「2年間訓練を受ければ、技術を習得することができ、訓練終了後、朝鮮半島の製鉄所で技術者として就職することができる」と書かれていた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

再送(18日配信記事)-パナソニック、アノードフリ

ワールド

米・イスラエル、ガザ巡る国連職員の中立性に疑義 幹

ビジネス

米アメックスがプラチナカード刷新で3500ドル追加

ビジネス

午前の日経平均は続伸、ハイテク株主導で最高値 一巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中