最新記事

中国経済

世界最大の自動車市場の中国で「商用EV革命」 メーカー各社が熱視線

2018年11月25日(日)18時04分

箱型で実用的

EVトラックは、テスラのEVのように世間の想像力をかき立てないかもしれないが、多くの自動車専門家はその出現を推奨していた。

EV業界が長距離向け自家用車に参入する利点について、専門家は懐疑的だ。EVバッテリーは重く、走行距離に限りがあるため、この技術は短距離用トラックの方が向いており、とりわけ、あらかじめ決められた、あるいは少なくとも予測可能なルートを往復する市内配送用バンやトラックに適している、と彼らは考えている。

中国では、完全なEVとプラグインハイブリッド車(PHV)を合わせた小型商用EVの販売台数は昨年、約20万台に達した。これは、6トン未満のトラック市場の約6%に当たる。

中国でEVトラックを開発する世界的な自動車メーカーの1つである日産自動車<7201.T>は、軽量EVトラック需要が今後4─5年で4倍に増えるとみている。日産と東風汽車集団<0489.HK>の中国合弁企業「東風汽車有限公司」は、2022年までに商用EVの販売台数を現在の6倍、9万台に増やすことを目標としている。

日産と連合を組む仏ルノーも同様だ。華晨汽車集団と合弁会社を設立し、来年から2年以内に配送用EVバンを3車種発売する計画だ。

米著名投資家ウォーレン・バフェット氏が出資する中国自動車メーカーの比亜迪汽車(BYD)<1211.HK> <002594.SZ>や浙江吉利控股集団[GEELY.UL]もEVトラックやバンを販売しているが、その売り上げはまだかなり小さい。

EVトラックの成長は、中国の中央・地方当局のEV奨励策のおかげでもある。当局は、内燃エンジン技術で世界のライバル企業に遅れを取っている国内自動車産業を活性化させ、国民の不満の原因となっている大気汚染を削減しようとしている。

中央政府からの最大10万元(約160万円)の補助金だけでもEVへの転換を加速させている。日産で最も人気の高いEV商用車「東風D94」の場合、中央政府と地方当局から最大で計8万元の補助金を受けることができる。これにより買入価格の3割削減が可能となる。

北京、上海、広州など約20都市は、化石燃料トラックによる市中心部への走行を制限している。北京は昨年、午前6時から午後11時まで、大型トラックが市中心部に入ることを禁止した。来年には、ディーゼルトラックや他の一部商用車向けの規制が強化される。

「われわれはeトラックに賭けている。近い将来、eトラックとeバンしか市の中心部に入れなくなるからだ」と、日産の中国幹部は言う。「成長を続けるeコマースによって、配送用EVバンの未来は明るいとわれわれは考えている」

(翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)

Norihiko Shirouzu

[北京 16日 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2018トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

ニューズウィーク日本版 岐路に立つアメリカ経済
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月3日号(5月27日発売)は「岐路に立つアメリカ経済」特集。関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

インフレ鈍化「救い」、先行きリスクも PCE巡りS

ワールド

韓国輸出、5月は前年比-1.3% 米中向けが大幅に

ワールド

米の鉄鋼関税引き上げ、EUが批判 「報復の用意」

ワールド

ガザ停戦案、ハマスは修正要求 米特使「受け入れられ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 2
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 3
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 4
    「ホットヨガ」は本当に健康的なのか?...医師らが語…
  • 5
    ペットの居場所に服を置いたら「黄色い点々」がびっ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    メーガン妃は「お辞儀」したのか?...シャーロット王…
  • 9
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシストの特徴...その見分け方とは?
  • 3
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が知らないアメリカの死刑、リアルな一部始終
  • 4
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 5
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 6
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 9
    【クイズ】世界で2番目に「金の産出量」が多い国は?
  • 10
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 7
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 10
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中