最新記事

欧州

ブレグジットで人材難の英国、産業界にようやく自動化の波

2018年10月21日(日)17時20分

 10月14日、英国製造業では長らく、他の先進諸国に比べて自動化が遅れていた。理由の1つは、欧州大陸から無尽蔵とも思われる労働者の流入があったからだ。写真は英レティッチにあるミュラー・プレシジョン・エンジニアリングの工場で8月撮影(2018年 ロイター/Darren Staples)

英南部レティッチにあるミュラー・プレシジョン・エンジニアリングの工場で、ジェームス・ギブスさんは、ガタゴトと動く3台の機械を担当している。彼が生まれるより前に製造された古い機械だ。

ポーランド人とハンガリー人の同僚2人は、20秒に1回、半完成品の金属部品をプラスチックの軸に装着して、研磨機のあいだに15秒間差し入れる。仕上がったサイズをチェックして、トレイに入れる。

「繰り返すだけの作業だ」と27歳のギブスさんは言う。「たとえ何時間働くにしても、その間は装着ミスが起きないように集中力を保たなければならない」

来年半ばには、作業員2人が担当している業務は、センサーとロボットアームによって行われるようになる。

英国の製造業では長い間、他の先進諸国に比べて自動化が遅れていた。理由の1つは、欧州大陸から無尽蔵とも思われる労働者の流入があったからだ。

だが、2016年6月の英国民投票で欧州連合(EU)離脱(ブレグジット)を決めて以来、こうした低コストの労働力流入を当てにすることが難しくなった。3月までの1年間で東欧からの移民純流入は、過去8年間で最低となり、今後も状況は悪くなる一方ではないかと業界団体は懸念している。

自動化投資に火がつくことは、英国経済にとって大きな意味があるかもしれない。企業が労働力頼みから脱却すれば、生産性が改善され、長らく年2%程度で低迷している賃金上昇も勢いづく可能性がある、とエコノミストは指摘する。

ミュラー・プレシジョンでは、すでに自動化が進んでおり、カバーの付いたコンベアによって、コンピューター制御の旋盤に部品が送り込まれている。このレディッチ工場に15万ポンド(約2200万円)を投資することで、ボルボ製トラック用のブレーキ部品を製造するプロセスが自動化される予定だ。

約130人が働く同工場でマネージング・ディレクターを務めるアダム・カニンガム氏によれば、現場での手作業は単調だが危険を伴い、適任者を見つけることが難しい場合もあるという。

「それに加え、ブレグジットによって労働者の流入数が減っていることもあり、特にこの分野では自動化を考える必要があるとの声が上がってきた」とカニンガム氏。「基本的には、人間の代わりにロボットを導入することになるだろう」

国際ロボット連盟(IFR)によれば、英国では、先進諸国のみならず、東欧諸国の一部と比べても、産業用ロボットを工場で活用する度合いが低いという。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

英政府、子どものSNS利用に関する協議開始 豪の禁

ビジネス

カナダ企業、景況感なお低迷 米との貿易摩擦などで=

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、欧州株安を嫌気

ビジネス

ブラジルの2025年コーヒー輸出、156億ドルで過
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:「外国人問題」徹底研究
特集:「外国人問題」徹底研究
2026年1月27日号(1/20発売)

日本の「外国人問題」は事実か錯誤か? 7つの争点を国際比較で大激論

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「耳の中に何かいる...」海で男性の耳に「まさかの生物」が侵入、恐怖映像と「意外な対処法」がSNSで話題に
  • 2
    「死ぬところだった...」旅行先で現地の子供に「超危険生物」を手渡された男性、「恐怖の動画」にSNS震撼
  • 3
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 4
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    中国、欧米の一流メディアになりすまして大規模な影…
  • 7
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 8
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 9
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 7
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 8
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 9
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 10
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中