最新記事

セクハラ

「性的暴行ホットライン」への相談電話急増...全米が注目した公聴会を観て

2018年10月1日(月)17時30分
松丸さとみ

公聴会当日は「性的暴行ホットライン」への相談電話が急増した REUTERS/Jim Bourg

<連邦最高裁判事候補から性的暴行を受けたと告発した心理学教授と、判事候補本人がそれぞれ、上院司法委員会で証言し、全米が注目。当日は、性的暴行相談件数が147%増加した...>

上院公聴会の生中継、全米が注目

9月27日、米国中が注目したニュースがあった。連邦最高裁判事候補から性的暴行を受けたと告発した心理学教授と、これを完全に否定する判事候補本人がそれぞれ、上院司法委員会で証言したのだ。公聴会は9時間に及んだ。ハリウッド・レポーター紙によるとこの日、3つのニュース専門ケーブルチャンネルと3つの放送局がそれぞれ公聴会を中継し、視聴者数は合計で2000万人に達したという。

上院司法委員会で証言したのは、カリフォルニア州のパロアルト大学で心理学を教えるクリスティン・ブレイジー・フォード教授だ。連邦最高裁判事に指名されているブレット・カバノー氏から36年前、お互いに高校生だった時に性的暴行を受けた、との主張を受けたものだ。

この公聴会を受けて、米国の人たちはさまざまな反応をした。CNNによると、カバノー氏への支持または反対の意思を示すために、抗議活動をしようと多くの人たちが上院司法委員会の建物の前に集まった。また、特集を組んでいるテレビ番組に電話をかけてくる人や、ツイッターで思いを吐き出す人もいた。

政治専門のケーブルチャンネル「C-SPAN」は、番組中に電話をかけてきた視聴者の女性の談話を、番組のビデオをつけてツイッターに投稿した。現在76歳のブレンダさんは、セカンドグレード(日本の小学2年生に相当)の時に性的虐待を受けた経験があったという。これまでずっと、この体験を乗り越えたと自分では思っていたが、今回のフォード氏の証言を見ていたら、過去の痛みを思い出してしまった、と涙ながらに語った。「(その時は)混乱してしまったり、理解できなかったりするかもしれないけど、それでも自分の身に起きたことは決して忘れないものだ」と悲痛な胸の内を告白した。

公聴会当日、性的暴行相談件数が147%増

ブレンダさんと同じように感じた人たちは多かったようだ。米誌タイムは、性的暴行について電話で相談できる「性的暴行ホットライン」への相談電話が27日、通常の平日と比べ147%も急増したと伝えた。

このホットラインを運営している非営利組織のRAINNがタイム誌に説明したところによると、一般的に、性的暴行がニュースで話題になると、相談電話の件数は増える傾向にあるという。例えば2016年、当時まだ大統領候補だったトランプ氏が過去(2005年)に女性について軽蔑的な発言をしたことが暴露されニュースになった時、ホットラインへの相談件数は33%増加した。しかし今回の増加率と比べると、フォード氏のカバノー氏に対する証言にどれほどインパクトがあったかがうかがえる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ドル一時153.00円まで4円超下落、現在154円

ビジネス

FRB、金利据え置き インフレ巡る「進展の欠如」指

ビジネス

NY外為市場=ドル一時153円台に急落、介入観測が

ビジネス

〔情報BOX〕パウエル米FRB議長の会見要旨
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中