最新記事

災害

関西空港、露呈した巨大欠点 「国際空港」として最悪レベルの情報発信

2018年9月12日(水)07時00分
さかい もとみ(在英ジャーナリスト)*東洋経済オンラインより転載

ちなみに中長距離便の多くは現在、中部国際空港(セントレア)を代替発着地として飛んでいる。例えば、デルタ航空のホノルル便は、もともと関空発着だった旅客の予約をそっくりそのまま中部便に振り替えたし、関空とフランクフルトを結ぶルフトハンザは中部便の増便および機材の大型化を図って輸送力の確保に努めている。

ユニークなところでは、本来関空に発着するLCC・エアアジアXのホノルル便が現在、中部を拠点に飛んでおり、ややもすると「東海圏からのハワイ行きがふだんより安く行けるチャンス」という状況が生まれている。

外国語による情報発信に依然問題も

関空の発着便は以下のような流れで徐々に増えている。以下はKAPが発表した旅客便のリストを元にまとめたものだ。


・9月7日(再開初日)...全て国内線で出発7便、到着12便
・9月8日...国際線出発8便、到着6便。国内線出発16便、到着17便
・9月9日...国際線出発14便、到着14便。国内線出発21便、到着21便
・9月10日......国際線出発・到着各15便。国内線出発・到着各21便
・9月11−13日......国際線出発・到着各9便。国内線出発・到着各22便


このように、台風被害後3日間で最初のフライトを飛ばしたことは評価できるが、KAPは各種の情報発信は依然として不得手なようだ。

関空のフライト運航情報。日本語版のみ詳細が記載されている(筆者撮影)

関空のフライト運航情報。日本語版のみ詳細が記載されている(筆者撮影)

例えば、その日の就航予定が空港の案内ウェブサイトで告知されているが、トップバナーの表示からpdfフォーマットのお知らせをダウンロードするだけ、という仕組みだ。非常時なのでサイト運営者の手が普段のようにかけられないという事情があるにせよ、仮にも国際空港の顔となるサイトなのだから「もう少しなんとかならないのか」という気がしてならない。

さらに困ったことに、外国語による案内の中身は日本語ページの情報量と比べて著しく薄い。日本語版には関空をその日に出入りする予定の便とその時刻がエクセルのフォーマットですべて記載されている一方、外国語版はT2への乗り入れが想定される各社サイトへのURLが表記されているに過ぎない。

しかも韓国語版については、英語のものがそのまま貼り付けられている。「情報が欲しくて困っている旅客」が多いいまの状況でこそ、より具体的で細やかな情報発信が求められると考えるが、逆にスカスカな情報を公表するにとどまる現状を見ると、果たして「再開後にインバウンド客を盛り返す気が本当にあるのかな?」と疑いの目を向けずにはいられない。

想定外の大きな被害を受けた関空だが、関係者の努力で再開に向け着実に前へと進んでいることは間違いない。しばらくはインバウンド需要の収縮や関空行き旅客の他空港への振替による混乱は続くことはやむを得ないだろうが、改装や修理が手抜きや無理な突貫工事がないよう確実な形で進められることを望みたい。

筆者も、ヒースロー空港の空港職員らと「KIX行きの荷物をようやく流せるようになったね」とおしゃべりできる日が一日も早くやって来ることを期待している。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
toyokeizai_logo200.jpg

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国GDP、第1四半期は前期比+1.3%で予想上回

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米金利高止まりを警戒

ワールド

メキシコ大統領選、与党シェインバウム氏が支持リード

ワールド

ウクライナ、国外在住男性のパスポート申請制限 兵員
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中